調理場で「小林カツ代」を助手にして、料理を作ったのは、おそらく、後にも先にも私一人なのではなかろうか?
お米がきっかけで、私に舞い込んできた、秋田県大潟村での「おいしい米づくり日本一大会」の審査委員をご一緒した。
午前中に二〇種の「無農薬米」、午後に二〇種の「減農薬米」の御飯の試食審査をした。三分おきに次々に目の前に現れる「ごはん」を味見するだけでお腹がいっぱいになるというのに、昼の休憩時間にも、カツ代さんはお弁当を召し上がるというプロの芸当を見せてくださった。料理家としてばかりか、食べ手としても一流だった。このコンテストの審査委員をきっかけに、秋田の銘酒「太平山」のミニコミ誌「蔵」で、作り手と食べ手の「リレーエッセイ」の連載が始まった。この往復書簡で気が付いたのだが、お互いの共通点は「美味しいものを食べるのではなく、ものを美味しくいただく」ということだった。一緒に食卓を囲んで、こんなに料理が美味しく、楽しくなる人はいなかった。小林カツ代は「食べる達人」でもあったのだ。
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