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【試し読み】本屋大賞受賞! 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』第5回

文: 瀬尾 まいこ

2019年本屋大賞受賞『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ 著)の冒頭を公開します。

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『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ 著)

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 目覚まし時計を止めカーテンを開けると、柔らかい光が部屋に広がった。春特有のふわっとした暖かさ。入学式や始業式。新しいスタートが四月にあるのは正解だと思う。穏やかな日差しは、緊張や不安の半分くらいは包んでしまう。高校三年の始業式で構えるようなこともないのだけど、温かい光に心は落ち着いていく。

 昨日まで春休みのせいで、少しぼやけた頭でダイニングへ向かうと、濃いだしと油のにおいがした。なんだっけ、このにおい。と大きく息を吸い込んで思い出した。

 ああ、そうだった。去年、二年生がスタートした日も朝から食べさせられたっけ。胃が目覚めてないのに困ったなと、げんなりしながら食卓に着くと、森宮さんがにこにこしながら大きなどんぶりを私の前に置いた。

「おはよう。優子ちゃん、今日から三年生が始まるね」

「そうだね。でも……」

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そして、バトンは渡された瀬尾まいこ

定価:本体1,600円+税発売日:2018年02月22日


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