「信じる政治に邁進しただけで、罪は犯してない!」
──衆議院議員を長く務めた宇田清治郎も、表向きは「わたしは何も罪を犯してはいない。自分の信じる政治に邁進してきただけだ」と語っていますが、実際にはそうではありません。小さな罪から、総理の「オトモダチ利権」にまつわる疑惑まで、いったいどの罪を自白すれば、孫娘が解放されるのか、と悩み苦しむところも読みどころの一つです。
「女性問題なども入れていけば、いくらでも罪は出てくると思うんです。ただ、今作ではコメディタッチにならないように、ハードなサスペンスとして緊張感を失わないように、と気を配りました。
脅迫される対象が政治家だとすると、ライバル派閥との関係性などを描いていけば、群像劇にもできますが、今回は、あくまでも家族の物語にしたかったんです」
──主人公は、宇田清治郎の次男・晄司。晄司は、政治家一家に生まれながら、企業経営という仕事に就いたことで、父・宇田清治郎の地盤を継ごうと考えている長男や義兄とは違う視点で「政治」という家業を見ていました。
「政治の世界から距離を置き続けた主人公が、身内である父の罪を見つめながら、姪っ子の命を救うために何ができるか、と苦悩する。かつては嫌悪していた父親の仕事の裏側を見たり、これまで見えていなかった兄弟の奮闘を知ることで、晄司が成長していく、ビルドゥングスロマンの側面も描けたと思っています」
──タイトル、『おまえの罪を自白しろ』は、刺激的ですね。
「『この世の中に、過去に、ただの一度も罪を犯してこなかった人がいるんだろうか』と考えながら、小説を書いていたんです。『自分がこんなふうに脅迫されたら、政治家じゃなくてもきついなぁ』と。タイトルの『おまえ』という言葉は、いろんな方々のことを指しています。宇田家の戦いを読みながら、自らの身に置き換えて、物語を楽しんでほしいですね。
次に、誘拐モノを書くとなると、これ以上のアイデアが必要になります。もうこのジャンルには手を出せないかなぁ、と思うくらいの一冊になったと思っています」
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