インタビューほか

<堂場瞬一インタビュー> 転勤を志願した同期の死を探る

「オール讀物」編集部

『帰還』

『帰還』(堂場瞬一 著)

 定年まであと十年を切って、突然、東日新聞四日市支局長に志願した藤岡裕己が、工場夜景の撮影中に、水路に転落して死亡した。地元の警察は、事件性はなく事故死と判断したが、藤岡と共に新人時代を過ごした同期三人は、水が大の苦手だったはずの藤岡の死亡状況に疑問を持つ……。堂場瞬一さんの最新刊『帰還』は、中年世代が持つ等身大の問題を遠景として描きながら、記者の死の真相に同期三人が迫るという大人のミステリだ。

「『オール讀物』で連載開始したときの自分がまさに同世代で、現役で大学を卒業していたら、ちょうど社会人三十年目の五十三歳。人生を振り返るにはすこし早いけれど、やり直すにはちょっと遅いかもしれない。そんな状況で、彼らは何を考えて仕事をしているのか。自分も、ひょっとしたら同じ状況にいたかも知れないと、想像しながら書きました」

「自身も作家デビュー当時、新聞社勤務だった堂場さん。これまでも『警察(サツ)回りの夏』や『虚報』など現代の新聞社が抱える問題を正面から捉えた作品を、数多く執筆してきた。

「新聞記者を取り巻く環境も、この三十年で大きく変わりました。私が新人の頃は、カメラも銀塩フィルムでしたし、原稿もまだ手書きでした。甲子園の取材に、県庁や警察回り。新人のやることは変わらないのに、採用人数も支局の人数も、いまよりずいぶん多かった。最近では、支局長一人で回す地方支局も、ずいぶん増えたそうです」

 藤岡の同期で、事件記者などを経て、現在は編集委員の松浦。社内初の女性重役の目が出て来た高本。そして政治部で出世の階段を上っていたはずが、突然関連財団に出向させられた本郷。葬儀で顔を合わせた三人は、それぞれ、子どもの進路、親の介護、そして仕事の問題を抱えながら、錆び付きはじめた記者としてのスキルと人脈を使いこなし、藤岡の意外な過去から死の真実を突き止めていく。だが、それは自身が気づかなかった過去と直面することでもあった。

「『帰還』というタイトルは、彼ら四人が、初任地の三重に戻るという意味と、自分たちが新人記者だった頃の原点に戻るという意味も込めています。新聞の危機が叫ばれて久しいですが、まず、ジャーナリズムの原点って何だろうと考えたとき、やはり真実を知りたいと思うのはいつの時代も変わりはありませんからね。でも、新聞の特ダネというのは、売り上げや数字に直接結びつく仕事ではありません。そう考えると、“新聞社”というのは、不思議な商売だなと改めて思いました」


どうばしゅんいち 一九六三年茨城県生まれ。新聞社在職中に、『8年』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。近著に『ザ・ウォール』『割れた誇り ラストライン2』など。

こちらのインタビューが掲載されているオール讀物 5月号

2019年5月号 / 4月22日発売 / 定価980円(本体907円)
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帰還堂場瞬一

定価:本体1,700円+税発売日:2019年04月05日


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