こんな変わった彼らの思いや、そのやり取りは、今はもう残っていないけれど、面白くないはずがない。それが面白く感じられるように、百数十年前の史資料の合間に残った残り香から、味付けしてやれば良い。兵庫で生まれ育ち、大阪で四年勤務した自分にとって、納得のいく話し言葉に仕上げられたら、きっと大阪らしい瑞々(みずみず)しさを取り戻して楽しいはずだ。そう思い、この作品を書き始めました。
基になる論文や当時の新聞資料を、物語の形に「解凍」する作業には、一年とちょっとばかりかかったように思います。それだけ、素材自体は、時代を長く経ても残る、そんな固さのあるものだったのでしょう。今の作品の形であっても、そもそも文字で文章になっている以上、喋り言葉本来の生々しさからは既に離れているはずです。
なので、この作品を最後の最後に解凍するのは、読む人にお任せしたいと思います。読む人の中にある熱い何かを注げば、三分とは言いませんが、いくらか待てばラーメンになるよう、せめてカップ麺にまではできたんじゃないかな、と思っています。
坂上 泉(さかがみ いずみ)
東京都新宿区在住。1990年生まれ。東京大学文学部日本史学研究室で近代史を専攻。現在、会社員。
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