当然、生ものを冷凍保存したものを解凍した時に新鮮さが幾分か失われるように、口語だから感じられる、発言者や執筆者の言葉の生々しさ、ピリッとした面白さや、職人技の織り成す機微は、失われがちです。
それでも、史資料の行間に、時折、どうしようもなく、スパイスの残り香を感じることがあります。
今回、松本清張賞をいただいた拙作『へぼ侍』も、着想の最初は、大学の近代史の講義で、西南戦争について解説していた指導教官が、こんなことを口にしたのがきっかけでした。
「新政府軍の編成を見ていると、なぜか大阪から剣客集団が参加しているんですよね」
近代的な新政府軍と前時代的な士族の戦い、と勝手にイメージしていた西南戦争に、士族なのに新政府側で、しかも大阪からわざわざ赴いた変わった連中が本当にいたのだろうか。その時心にできた、ちょっとした引っ掛かりが、数年経つと、自分の中でどんどん膨れ上がってきました。
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