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結婚式、直木賞受賞、そして『東京會舘とわたし』。ミステリーのように不思議なご縁で導かれた大好きな場所

結婚式、直木賞受賞、そして『東京會舘とわたし』。ミステリーのように不思議なご縁で導かれた大好きな場所

辻村 深月

『東京會舘とわたし』文庫化記念トークイベント


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

「東京會舘の花嫁」の一人になれてよかった

東京會舘で作られていた広報誌に、〈私の東京會舘〉という、会員の方が思い出を紹介するコーナーがあるのですが、三章の「灯火管制の下で」はそこに登場された方に取材をお願いしました。結婚式の最中、偵察機が窓の外に見えて、會舘の方が黒いカーテンを引いて、式を遂行させてくれた。式を終えて、灯りが消えて真っ暗な中、一日中付き添ってくれた女性が手をぎゅっと握ってくれて「どうかお幸せになってくださいね」と言ってくれたというお話でした。東京會舘では遠藤波津子美容室が結婚式の美装を担当されていて、私は美装のことも本で触れたかったので、実際は違うだろうけれど、その手を握ってくれた方を遠藤波津子さんご本人ということにしたいと申し上げに、当時の花嫁の方に会いに行きました。お願いをする前に、その方が「今でも覚えていますが、その方のお名前は遠藤さんと仰いました」と言われて、「ああ、これはいい小説になる。私の想像力を超えていく物語が生まれる」と心震える思いがしました。美容室の方も「それはうちの三代目に間違いないですね。そんな風に覚えてくださっている方がいるんですね」と言ってくださり、いろんな方と會舘を通じてつながっていくことができました。

現在のローズルームの灯り

私も「東京會舘の花嫁」と呼ばれる一人になれて良かったなとしみじみ思いました。これだけ東京會舘にお世話になったので、読者の方がここで結婚式を挙げてくれればご恩返しになると秘かに思っていたのですが、もうすでに何組かの方たちが「東京會舘とわたし」の本を手にお打ち合せにいらして、実際に式を挙げられたそうです。私が知る限り、東京會舘で結婚したカップルは皆さん幸せになっているので、自信をもってお薦めします。

文春文庫
東京會舘とわたし 上 旧館
辻村深月

定価:803円(税込)発売日:2019年09月03日

文春文庫
東京會舘とわたし 下 新館
辻村深月

定価:803円(税込)発売日:2019年09月03日

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