夕食を挟んで第2部は「この一冊、あの一冊」。石田さんが選んだのは川端康成の『眠れる美女』で、松坂桃李主演で映画化もされた『娼年』を書く際にインスピレーションを受けた作品とのこと。参加者もお酒やお茶を片手に聞く、よりリラックスしたムードに。
石田 僕が作家デビューして、集英社から最初の書き下ろしで好きなものを書いていいよと言われたときに、ベッドシーンを書くのは楽しいから「ベッドシーンだけの本にします」と言って、文体的な参考になるものがないかなと思っていたときにぶつかったのが『眠れる美女』でした。
この作品は『伊豆の踊子』や『雪国』ほど有名ではないですけど、本好きのあいだでは川端さんの最高傑作と言われています。
あらすじはというと、鎌倉の海辺にある秘密クラブがあって60代の男性が訪れます。そこには睡眠薬で眠らされた女性が裸で寝ていて、彼女たちと一晩過ごせるという場所なんです。ただし手を出してはいけない。川端さんも睡眠薬を飲み続けていたので、そこらへんからアイデアが出てきたんでしょうね。
「あ、これをひっくり返せば『娼年』になるな」と思いました。『眠れる美女』のほうは老人の話でしたけれど、『娼年』は若い男の子が体を売る話なんですね。それに能動的に動いていて、性行為もある。『眠れる美女』を読んだときは興奮しました。「うわぁ、これは文章も素晴らしいし面白い。ひっくり返せば僕のやりたいことが全部できる」と思ったことは覚えています。
そのあと話題は芸術とお金のバランスや現代の作家のあり方に広がり、石田さんはこれからの文化をファッションブランドのGUになぞらえて“GU化”と呼んで「簡略化してカジュアルになっていく」と予想、「小説も新しいジャンルから出自が違う新しい才能が出てくると思います」と言って締めくくりました。
最後は質問コーナーから写真撮影へ、参加者は石田さんと過ごす特別な一夜を最後まで堪能しました。
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