そういう告白文を頭の中でしたためながら、私は会社で爪をちぎっている。爪をちぎりすぎてすこし爪と指の間にあるはずの柔らかい部分が見えて、やらしい、と思う。血が出ない程度、痛みのない程度に爪をちぎり終えると床に捨てて、そうすればその肉のやらしさを私は忘れ爪は伸び、あっという間にすべては無くなるが、私がお金を土に埋めたというその興奮もいつか無くなるのだろうかと思った。実は嘘の供述がある、私は確かに心のノートにハルカスから捨てると書いたけれど、そんなニュースになるようなことはしない。というか、お金をばら撒くと逮捕されてしまうと昔テレビで見てから、どんなに大金を得ても高いところから撒くことだけはしないでおこうと決めていた。小市民なのです。だから私は土に埋めた。妻はいないし夫もいないし家を買おうという人間もいないし家族もいないし、しかし弟はいる。弟は絵を描いているし妻もいるし、その妻はマンションを買おうとしている。誰の金で? 私は宝くじが当たったことがばれないように誰にも言わずに爪をちぎっていた。
高校受験の頃は眉毛を抜くか、爪をちぎるかをずっとしてしまって、それが自傷行為の一種だとネットで見たときにどちらかといえばもっと不埒なものだと思う、と頭の中で答えていた。爪と指の間の肉をさらけ出したいし、眉毛に隠された皮膚をあらわにしたい。そういうものに興奮しない奴はにせものである、性欲とかないんでないか? 他人から教わった欲望をなぞってさも自分がいやらしい生き物かのように演じている。大丈夫あなたは聖なるひとよ。
この続きは、「文學界」2月号に全文掲載されています。
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