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直木三十五賞 候補作家インタビュー(4)誉田哲也 情報化社会の犯罪捜査とは

『背中の蜘蛛』(誉田哲也 著/双葉社)

『背中の蜘蛛』(誉田哲也 著/双葉社)

「姫川玲子」シリーズや〈ジウ〉サーガなどの警察小説を手がけてきた著者の新作は、情報化社会を背景に、高度化する捜査技術をとりあげた衝撃作だ。

「今回初めて、警察内に架空のセクションを書きました。実際には、どんな犯罪が起こっても、どこかしらの部署が対応します。なので、自分がもし架空の部署を書くとしたら、この方法しかないだろうなと思っていたんです」

 刑事課長の本宮は、刺殺事件を捜査中にあることを内密で調べるよう指示を受ける。その結果、事件は解決。しかし上官からはその後も何の説明もなく、本宮は違和感を抱く。

 続く第二部でも、植木警部補が巻き込まれた爆殺傷事件の捜査中に、唐突なタレコミから容疑者が浮上。植木はそのタレコミに疑問を感じる。本宮と植木、この二人が抱く違和感の正体とは――。

 これらをぐのが第三部だ。FBIで研修を終えた上山警部が配属されたのは警視庁総務部情報管理課運用第三係、通称“運三”。ある最新技術を使って捜査を行う、警察内でもごく一部の者しか存在を知らない部署だ。

「捜査技術として、新しいテクノロジーには常に興味を持っています。防犯カメラの映像を収集分析するSSBC(捜査支援分析センター)もその一つです。“運三”は、さらなる最新技術を使い、現状の法律上では難しい捜査をする架空の部署。試験運用中という設定ですが、かつてはSAT(特殊部隊)も、その前身は極秘扱いでした」

 インターネットが普及し、日常生活は既にサイバースペースに呑み込まれている。止めようのない変化に追いつこうとすれば綺麗ごとでは済まされない。だが果たして、「運三」がしていることは正義と言えるのか――上山は、自らの倫理観から疑問に苛まれる。

「特別な能力を持つ秘密部署が活躍し、事件を解決する物語を書きたかったわけではないんです。こういった新技術が運用される際には、警察内にだっていろんな考え方があるはず。それに、本宮がやっている従来のような足を使った地道な捜査も、必要であり続けると思います」

 上山たちが、悩み、疑問を抱きつつも直面せざるを得ない「運三」のあり方。そのリアリティは、現役の警察官から「どこまで本当か」と聞かれたというほど。

「普段からクレジットカード情報を入力するし、携帯電話のGPSだっていちいち切ったりしませんよね。もうそんな世の中になっていて、止めることはできない。だからせめて、覚悟をしておく必要があると思っています」


ほんだてつや 一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『妖の華』で第二回ムー伝奇ノベル大賞優秀賞、〇三年『アクセス』で第四回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞。


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