- 2020.02.13
- 書評
「どんでん返しの帝王」歴代屈指の強烈なラストがあなたを待ち受ける!
文:宇田川 拓也 (ときわ書房本店 文芸書・文庫担当)
『ネメシスの使者』(中山 七里)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
二〇一〇年代、もっとも司法に鋭い目を向け、作中で様々に取り上げてきたミステリ作家──。
この文庫の刊行年である二〇二〇年は、中山七里にとって作家生活十周年のメモリアルイヤーに当たる。この節目となる年を迎え、いま改めて稀代の作家の活動を振り返ると、“どんでん返しの帝王”の異名、数々の社会問題を臆することなく扱う果敢さ、そして前述のような印象を強く覚える。
著者の多彩な作品群を見渡してみると、そのなかには、物語に司法が絡んでいることが次第にわかるものと、初めから司法を題材にしていることが明確なものがある。興を削いでしまってはいけないので前者に該当する作品のタイトルは伏せるが、後者では、凄腕ながら多額の報酬を要求することで悪評高い弁護士──御子柴礼司が主役を務める『贖罪の奏鳴曲(ソナタ)』(二〇一一年)から始まる一連のシリーズ。冤罪を隠蔽しようとする警察組織のなかで孤軍奮闘する刑事を描く『テミスの剣』(二〇一四年)。囚人を相手に仏の教えを諭す教誨師が、確定死刑囚となった親友の内に秘めた真実を探ろうとする『死にゆく者の祈り』(二〇一九年)などがある。いずれも巻を措く能わずといえる作品ばかりだが、司法を扱った中山七里作品のなかでも現時点での最高傑作を選ぶなら、筆者は本作『ネメシスの使者』を挙げる。
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