「これまでは『日常の謎』ジャンルのミステリーを書いていたのですが、今回初めて殺人事件を扱いました。書いていなかったことがプラスに働いたのか、自分史上最速で原稿が仕上がったんです。が、そのあとこの本を世に出すまでが大変でした。つまり、中身だけじゃなくて、もっと……。僕はマジックが大好きで自分で演じたりもするのですが、それと同じ楽しさとか驚きを読者の方に味わってほしいと考えたんです。マジックというのは、お客さんがショーが始まったなと思ったときには、すでに“仕込み”は終わっているんですね。その方向性をめぐっては紆余曲折ありましたが、結果的には最高の“仕込み”ができたと思います」
一ページ目を開く前に、すでに読者は小説の世界に引きずり込まれている。それがこの小説の醍醐味だ。相沢さんのマジック愛に裏打ちされたエンタテインメント哲学とでもいうべきものが『medium』には流し込まれているのだ。
「マジックと小説の共通点をリストアップしたことがあるんですが、どちらも持ち運びができるコンパクトな非日常をお届けできるエンタテインメントという部分が似ている。日常生活を送っていて、不思議な謎に出会ったり、意外なオチに驚いたりすることってないじゃないですか。この二つは、そんな日常を楽しく彩ってくれるもの。一つ相違点をあげるとすれば、マジックは実際の体験なのに対して、小説はあくまでフィクションだということ。だから今回の小説では、マジックと同じように小説を“体験”してほしいという思いでさまざまな仕掛けを施しています。ただ読むのではなく、ぜひ『medium』を体験してもらえたら嬉しいです」
あいざわ・さこ 一九八三年埼玉県生まれ。二〇〇九年『午前零時のサンドリヨン』で第一九回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化(二〇二〇年五月公開予定)が発表されている。
本作で「このミステリーがすごい!2020年版」国内編 第一位、「2020本格ミステリ・ベスト10」国内ランキング 第一位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019年ベストミステリーの三冠を獲得。本屋大賞、吉川英治文学新人賞にもノミネートされた。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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