インタビューほか

<松葉屋なつみインタビュー>秘密を抱えた少女が“鬼”に立ち向かう、冒険活劇

別冊文藝春秋

『星砕きの娘』(松葉屋なつみ 著/東京創元社)

<松葉屋なつみインタビュー>秘密を抱えた少女が“鬼”に立ち向かう、冒険活劇

『星砕きの娘』(松葉屋なつみ 著/東京創元社)

 創元ファンタジイ新人賞を受賞した『星砕きの娘』。帯の「選考委員激賞の傑作」という文句の期待を超えた、興奮を呼ぶ一作に仕上がっている。どのようなきっかけでこの小説が生まれたのか。

「元々は、少年と少女の冒険活劇を書きたいと考えていたんです。そんなとき、旅行の先々で坂上田村麻呂が倒したという化け物の墓に、なぜか立て続けに遭遇しまして。興味をひかれて調べ始めたことと活劇の構想とが結びついてこの小説が生まれました」

 舞台は鬼の跋扈する地、敷島国。母親と共に〈鬼岩の砦〉に囚われていた鉉太は、あるとき蓮の蕾を拾う。不思議なことに、鉉太が砦に戻ると蓮の蕾はいつの間にか赤子へと変化していた。赤子は蓮華と名付けられ、美しさと強さを兼ね備えた娘に成長する。しかし、蓮華には大きな秘密があった。〈明〉の星が昇ると赤子に戻ってしまうのだ。そんなある日、〈鬼岩の砦〉に都から討伐軍が派遣されたという情報が舞い込む。鉉太と蓮華は討伐軍の動きに呼応し、砦の主「羅陵王」と呼ばれる鬼に戦いを挑む……。

 鉉太と蓮華の行く先には次々と鬼が現れ、二人を亡き者にしようとする。バッタバッタと鬼を倒す二人の活躍は痛快だが、一方で単純な善悪で割り切れない世界を描くことで、物語の射程が大きく広がった。「鬼は単なるモンスターではないんですね。鬼を生むのは、憎悪や後悔といった暗くて扱いの難しい感情です。なので、彼らは決して尽きません。目の前の鬼を退治して幸せに暮らしました、というわけにはいかない。主人公たちが作中で何を体験し、どんな着想を得て鬼のいる世界で生きていくのか、そこを描かなくてはと思いました」

 松葉屋さん自身が日々感じていることも、鬼の造型に影響を与えているそうだ。

「第一幕のメインの敵である羅陵王が、鉉太に対して『正義面したその傲慢、決して許しはせぬぞ!』と言うんですけど、これはほとんど私の心の叫びですね(笑)。鉉太は主人公ですから、どうしても正論を述べがちです。私自身は、正しく生きられるくらいなら鬼なんかやってないよ、と彼らに代わって反論してやりたい気持ちもあります」

別冊文藝春秋からうまれた本

別冊文藝春秋 電子版28号(2019年11月号)文藝春秋・編

発売日:2019年10月18日


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