
山岸凉子さんの作品に出遭ったのは、私の娘が中学一年のときでした。夢中で読書しているので、何の本かとのぞいてみると、それが山岸さんの『日出処の天子』。それで私もすっかりハマってしまって、聖徳太子に興味が湧き、それが昂じて奈良の法隆寺に家族旅行までしてしまいました。
主人(篠田正浩監督)は日本の歴史に関しては専門と言えるほどで、著書もあり、夢殿や玉虫厨子を主人の解説で見学して廻りましたが、帰り道で娘が何か見るのを忘れた、と言って泣き出したりして、タクシーでまた引き返すほど母娘で熱中したものでした。
山岸作品のどこにそんなに魅了されたかと言えば、歴史上の人物の大胆な解釈――この時代は史実もそれほどはっきりしないでしょうから、自由に大胆に描けるその面白さ。厩戸皇子がBL(ボーイズラブ)であったり、近親相姦や超能力、そういった普通でないこと、異常なことを描きながらも、普遍的な、誰もが持っている感情に突き刺さってくるんですよね。厩戸皇子には、母親の愛情をまったく受けられなかったという究極の悲劇があります。山岸さんの作品には、得体の知れない怖さがあって、そこにとても惹かれましたが、その根底には人の胸にグッと迫る切実さがある。
そして、想像力を駆使して自由に作りこむ一方で、時代考証などはとてもきちんとしていらっしゃる。アクセサリーや衣裳ひとつとっても史料を見ながら描いておられることにも感心しました。
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