「当方としては、今ある借地権を売却したいのですが、お父様が反対のようで困っています。なんとか、ご協力いただけないでしょうか」
「はあ、お話はわかりましてんけど、なにぶん父が所有しとる土地やから、私からどうこう言えへんのだす。せっかくお越しいただいたのに、お力になれずに、すんません」
すでに地主である父からも話を聞いていたのでしょう。関わり合いになりたくないと思っているのか、あっさり協力を断られました。
ところが、その言葉に税理士が身を乗り出して言いました。
「これは、あんさんにもごっつう関わりのあることでっせ。むせぇ(むしろ)、ご子息にとっては、ええ話かもしれまへん。なぜなら、こないなことを申し上げては余計なお世話かもしれまへんが、これから何十年かの間には、ご子息も相続に直面する可能性がおますやろ。
失礼ながら、少しお父様のことを調べさせてもろたんですが、この物件の他にもいくつか底地(借地権が設定されている土地)を持っていはる。今のままだと、相続がめっちゃ大ごとになりまっせ」
税理士の話では、「借地権」はとても強い権利なので、借りた人がずっと親子代々住み続けたいと思えば半永久的に土地は戻ってこない。しかも、「借地権」のある土地の底地だけを売ろうとしても、こうした土地は扱いが面倒なので、だれも買わない可能性がある。もし売れても、そもそも足元を見られるので、更地価格の1割にもならず二束三文に買い叩かれる可能性があるとのことでした。
しかも、底地を「相続」すると、底地に対する相続税を払わなくてはならない。相続する者にとっては、もろ刃の剣になるかもしれないというのです。
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