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「借地」なのに巨額の相続税が! ドラマよりももっとドラマチックなことが起きるのが「相続」

「借地」なのに巨額の相続税が! ドラマよりももっとドラマチックなことが起きるのが「相続」

荻原 博子

『最強の相続』(荻原 博子)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

『最強の相続』(荻原 博子)

「なら、どないするのがええんですか」

 慌てた口調で地主の息子が尋ねると、待っていたとばかりに税理士が言いました。

「あんさん、借地権がついた土地というのは、急須とその蓋みたいなもんや。蓋のない急須は、高くは売れへん。急須がなくて蓋だけでは二束三文。急須と蓋は、この2つが揃ってはじめてそれなりの価値になるんちゃいますか。

 ほなら、この際、あの土地の借地権と底地所有権をセエノで一緒に売るのが、いっちゃんええ。急須と蓋が揃っとったら、それぞれを苦労して売るのに比べて2倍、3倍の価値になる。一緒に売りまひょ」

 勝負あり。この言葉に、地主の息子の顔がパッとほころび、税理士の手を取ると堅く握手しました。

 その後、息子が父親の地主を説得し、土地売却に同意させたことはいうまでもありません。

 地主と自分たちの間の懸案が見事に解決され、兄弟には想像さえしていなかった1億円以上の遺産が転がり込んできました。それだけでなく、間に入って手続きを任された信用金庫も税理士も、みんなが儲かりました。

 東京に住み始めてすっかり東京人になっていた長男の雄一は、改めて、大阪人のピンチをチャンスに変える団結力と商売の才、合理性に感服したのでした。

「相続」はドラマです。どこでどう展開するかわかりません。

 けれど、このドラマを最終的にハッピーエンドで終わらせることこそが「最強の相続」と言えるのではないでしょうか。

文春新書
最強の相続
荻原博子

定価:880円(税込)発売日:2020年02月20日

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