「なら、どないするのがええんですか」
慌てた口調で地主の息子が尋ねると、待っていたとばかりに税理士が言いました。
「あんさん、借地権がついた土地というのは、急須とその蓋みたいなもんや。蓋のない急須は、高くは売れへん。急須がなくて蓋だけでは二束三文。急須と蓋は、この2つが揃ってはじめてそれなりの価値になるんちゃいますか。
ほなら、この際、あの土地の借地権と底地所有権をセエノで一緒に売るのが、いっちゃんええ。急須と蓋が揃っとったら、それぞれを苦労して売るのに比べて2倍、3倍の価値になる。一緒に売りまひょ」
勝負あり。この言葉に、地主の息子の顔がパッとほころび、税理士の手を取ると堅く握手しました。
その後、息子が父親の地主を説得し、土地売却に同意させたことはいうまでもありません。
地主と自分たちの間の懸案が見事に解決され、兄弟には想像さえしていなかった1億円以上の遺産が転がり込んできました。それだけでなく、間に入って手続きを任された信用金庫も税理士も、みんなが儲かりました。
東京に住み始めてすっかり東京人になっていた長男の雄一は、改めて、大阪人のピンチをチャンスに変える団結力と商売の才、合理性に感服したのでした。
「相続」はドラマです。どこでどう展開するかわかりません。
けれど、このドラマを最終的にハッピーエンドで終わらせることこそが「最強の相続」と言えるのではないでしょうか。
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