それまでに米国の同盟システムは選択と集中が進むと見てよい。人口政治経済学者のニコラス・エバスタットは、人口の増減が同盟の行方にも影響を及ぼすという。「人口が増え続ける米国は現在の米国の同盟国にとって魅力的な存在であり続けるが、米国は人口の減少し続ける現在の同盟国をそれほど魅力的に感じなくなるかもしれない」というのである。(Nicholas Eberstadt)
その場合、米国はインドとの提携にさらに傾斜し、中国に対する米国とインドの準同盟体制が生まれるかもしれない。
中印ともに海外の自国民の数は飛躍的に増える。中国のマラッカ海峡ジレンマ、インドのホルムズ海峡ジレンマはなかなか克服できない。両国とも海外プレゼンスやエネルギー供給面の脆弱性故に、外への攻撃的、さらには覇権的な姿勢を強める恐れが強い。中印関係は、ヒマラヤ山脈をはさむ内陸の葛藤からインド・太平洋をめぐる海洋の緊張へと変っていく。
二〇五〇年までには米中印が世界の核クラブの王座に座っているだろう。しかし、その独占性は核拡散によって希薄になっているに違いない。北朝鮮は事実上の核兵器国家となった。トランプ政権の登場後、米国とイランの核合意は振り出しに戻った。サウジアラビアとトルコも核保有に関心を抱いている。中国は核装備可能な戦域弾道ミサイルDF-26を配備するなど核戦力の近代化を進めている。ロシアは中距離核戦力(INF)全廃条約に違反して中距離巡航ミサイルを配備している(ロシアが二〇一九年三月、同条約への参加を停止し、八月に失効)。核兵器廃絶への期待の中で起こった「核の忘却」から「核の復権」へと再び、世界は動き始めている。「核兵器は実際に使用することを考えなければ抑止力として有効でない」という考え方が再浮上しつつある。その中で、日本の核保有の行方が世界の大きな関心となっていくだろう。(秋山信将・高橋杉雄編)
二〇五〇年を待たずに、世界の軍事大国がアジアにひしめくことになる。軍事費で見れば、インドは二〇一五年と二〇一七年に日本とロシアをそれぞれ上回った。ASEAN(東南アジア諸国連合)は二〇一九年、韓国を抜いた。二〇二二年に日本を追い越す。二〇二五年、韓国が日本を抜く。(IMF, World Economic Outlook Databases 2019)
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