「地政学」はすでに広く知られているが、「地経学」は初耳という方が多いだろう。地政学は地理、民族、宗教、資源、人口などをベースに、国際情勢を分析する手法だが、パワーポリティクスの最前線では、もはや時代遅れだ。地政学的課題を解決するために、経済を武器として使うこと――「地経学」こそが、いまや国際政治の主戦場なのだ。
二〇五〇年の世界
危機の時代になると、未来の予測への需要が急速に高まるようである。いま、そうした長期予測が各方面で行なわれている。
それらを参考にしつつ、二〇五〇年の世界の予測を──主にパワーの観点から──あえて試みることにする。
まず、人口とGDPの趨勢である。
人口規模は、インド、中国、ナイジェリア、米国、インドネシア、パキスタン、ブラジルが人口G7となるだろう。(国連「世界人口推計」二〇一七年改訂版)
このうち中国は二〇三四年まで人口ボーナス期が継続するが、その後は人口オーナス期に突入する。現在の日本を上回るほどの急激な高齢化と人口減少を経験することになるだろう。その反面、インドネシアは二〇四四年、インドは二〇六〇年まで人口ボーナス期を維持する。この中で、米国は今後とも人口が増加していく。現在のG7で今後人口が増えるのは米国だけである。
次に、経済規模は、中国、米国、インド、インドネシア、日本、ドイツ、ブラジルの順となる。(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット、長期マクロ経済予測、二〇一五年)
かくして世界は、中国、インド、米国の三国志の時代に突入する。ただ、戦略的、軍事的には米国が中国とインドに比してなお優位を保っているだろう。しかし、米国が世界にとって「予測できる安定勢力」から「不確実な変数」、さらには「攪乱勢力(ディスラプター)」へと変質するかもしれない。米国の最大のリスクは内政である。
その点は中国も変らない。二〇三〇年代の中国は、習近平路線の外への覇権と内での専制に対する「調整」局面に向かうだろう。債務と人口減が成長の足を引っ張る。中国エリート層の海外逃避が止まらなくなる可能性もある。
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