- 2020.05.18
- インタビュー・対談
<真下みことインタビュー>辛くても悲しくてもいつも朗らかに歌って踊るアイドルという生き方への尊敬
別冊文藝春秋
『#柚莉愛とかくれんぼ』(真下 みこと/講談社)
「今までに読んだ『アイドル小説』の中で最もリアリティに溢れた作品だ」という賞賛の声も寄せられた『#柚莉愛とかくれんぼ』は、第61回メフィスト賞受賞作。作者の真下みことさんは、現役女子大生覆面作家にして自らも大のアイドル好きだ。
「中学生のときにはAKB48さんの『マジすか学園』を欠かさず見ていましたし、高校生のときにはPerfumeさんのダンスにハマって自分でもコピーして踊っていました。いまは日向坂46の東村芽依さんが気になっています。アイドルって、楽しいことばかりじゃないし、何かあったら矢面に立つこともあります。単純にアイドル好きというよりも、どんなときも朗らかに歌って踊って笑顔を見せ続ける、アイドルという生き方を選んでくれたことへの尊敬の念が強いです」
物語は、ファンのツイートに一喜一憂し、自撮りで元気な自分を演出する売れないアイドル・青山柚莉愛の日常から始まる。彼女は「となりの☆SiSTERs」というグループのセンターを務めている。他に江藤久美と南木萌を加えた三人組で、CDの売り上げ3万枚がメジャーデビューの条件だが、その壁は越えられそうにない。それどころか、テコ入れのためにメンバーの増員が検討されているくらい、パッとしないグループだ。そんなとき、柚莉愛がリアルタイムの動画配信の最後に血を吐いて倒れるという事件が起きる。
「人前に出る人がどんなことを考えているのかに興味があるんです。そういう人にしか見えない景色があるんだろうなと想像する一方で、自分とかけ離れてはいるけれども、どこかに共通点もあるはずという確信も持っています。その共通点を探りたいという気持ちが、主人公をアイドルにした理由かもしれません」