インタビューほか

澤村伊智「このエッセイもまた小説の趣向の一部なのだ」

澤村 伊智

『邪教の子』新連載・特別寄稿

澤村伊智「このエッセイもまた小説の趣向の一部なのだ」

「別冊文藝春秋 電子版31号」(文藝春秋 編)

 全くのゼロから作品を生み出すことはできない。創造は模倣から始まる、という常套句が示すとおり作家の創作活動の契機においても、引用やパロディといった個々の作品の影響関係においても、先行作品の存在は無視できない。もちろん剽窃・盗作の類は論外であり、また「元ネタ探し」に必死になるような受容の在り方は事実誤認や牽強付会も多いので、個人的にはあまり好きではない。だが、「このシーンはあの作品のオマージュである」「登場人物の名前を伝説的コミックバンドのメンバーから借用している」といったことを知るのは楽しいし、それを起点に未知の作品へと興味が広がっていくことも多々ある。

 さて、今号から連載することになった『邪教の子』だが、タイトルを決める時、高木彬光の短篇「邪教の神」が全く頭になかったといえば嘘になる。だが内容は全く関係ない。所謂ミステリではないし、現在はクトゥルフと呼ばれる、ホラー界隈では有名なタコ頭の邪神も登場しない(作中では「チュールー神」)。その他の邪神も勿論出てこない。

 プロットが完成してから気付いたのだが、本作『邪教の子』は一九九〇年代初頭に公開された、ウェス・クレイヴン監督のホラー映画『壁の中に誰かがいる』に、多分に影響を受けている。こんな話だ。

 主人公はスラム街に住むアフリカ系の少年。彼は相次ぐトラブルで金に困り、家主の屋敷に泥棒に入ることにした。だが、先に偵察に行った仲間はいつまで経っても戻って来ない。待ちきれずに家主の屋敷に忍び込むと、そこは狂気に侵された家主夫婦が支配する、奇怪な人間たちの巣窟だった。仲間は彼らに殺され、食べられてしまったのだ。

 恐れ慄く少年。だが屋敷の奥で監禁され、家主に虐待を受けている少女・アリスの存在を知り、彼女を助け出すことを決意する――


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別冊文藝春秋からうまれた本

別冊文藝春秋 電子版31号(2020年5月号)文藝春秋・編

発売日:2020年04月20日


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