インタビューほか

相場英雄「〈逃げ場なし〉のヒリヒリした感覚を味わいながら書いている」

相場 英雄

新連載『マンモスの抜け殻』に寄せて

相場英雄「〈逃げ場なし〉のヒリヒリした感覚を味わいながら書いている」

「別冊文藝春秋 電子版32号」(文藝春秋 編)

NO WAY OUT

 新連載となる拙作『マンモスの抜け殻』を一言で表すとこうなる。No Way Out、逃げ場なし、だ。

 なんの逃げ場がないのか。ずばり、それは介護に関わるすべての人々の「逃げ場」だ。この連載では、介護を巡る諸問題が主軸となり、ストーリーが転がっていく。着想を得たのは、仕事場近くにある巨大な団地からだ。

 ご存じのように、日本は急速に人口が減っている一方、高齢化が猛スピードで進んでいる。その道の専門家によれば、あと五年で約八〇〇万人の団塊世代が七五歳超の後期高齢者となり、四五年後には全国民の四人に一人が後期高齢者になるという。

 多くの読者が認識していると思うが、日本という国はとっくの昔に成長が止まっていて、今度は世界中で誰も経験したことのない急激な縮みのフェーズに突入している。

 実際、近所の巨大団地を歩いてみると、目に入るのは老人ばかりだ。仕事場にいると、日になんども救急車がサイレンを鳴らして団地へ急行するのがわかる。一人暮らしの老人の体調が急変し、見回りのボランティアやお隣さんが頻繁に通報しているからだ。また独居老人の孤独死が多発し、地元自治体を悩ませている。

 団地の広場では、年老いた子供が超高齢の親の車椅子を押して歩く老老介護が当たり前の光景となっている。こうした状況を自身に置き換えてみると、事態はさらに深刻さを増す。

 私の郷里には八〇歳を超えた両親が暮らしている。幸い、二人とも今は健康であり、介護の懸念はない。だが私は一人息子であり、遠く離れた東京に暮らす。

別冊文藝春秋からうまれた本

別冊文藝春秋 電子版32号(2020年7月号)文藝春秋・編

発売日:2020年06月19日


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