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ウィズ・コロナ時代の伝統芸能(1)柳家喬太郎(落語)

ウィズ・コロナ時代の伝統芸能(1)柳家喬太郎(落語)

聞き手:生島 淳

オール讀物8月号

出典 : #オール讀物

柳家喬太郎、玉川奈々福、ナイツ、神田伯山、豊竹呂太夫。
トップランナーたちが語る自身の現在地と今後への決意――。

柳家喬太郎(落語)

 柳家喬太郎、五十六歳。全身からにじみ出るなんとも言えない色気。古典、新作、果ては舞台へと八面六臂の大活躍をしていたが、緊急事態宣言下では息をひそめるしかなかった。

 宣言の解除を受けて、新宿末廣亭は六月一日に再開、喬太郎は夜の部のトリをとった。寄席が帰ってきたことを喜ぶファンが新宿三丁目に足を運んだが、喬太郎の気持ちは晴れなかった。

「うれしいけど、複雑でしたね。やっと寄席に出られるってんで、パッと華やかな気分になれればいいんでしょうけど、おっかなびっくりというのが正直な気持ちでしてね。“夜の街”と呼ばれる歌舞伎町も近い。お客さまが笑ったら飛沫が飛び、それが感染拡大の元になって、寄席がクラスターになってしまったら、元に戻るのにまた時間がかかってしまう。自分がテンションを高くすると、お客さんが笑っちゃうんじゃないかという恐怖があって、フラストレーションが溜まりました」

 六月上席三日目のこと、不安はあれど高座に上がってしまえば熱が入って声も大きくなる。喬太郎、自分の唾が客席に飛んでいくのを目視、確認してしまった。

「そういうのが気になってね。余計なことに気を取られてるから、上下を間違えて、それをネタに取りこんじまえと思ったのに、うまく戻れなくなって悪いループにハマってしまいました。自分が臆病すぎるのかと考え込んでしまいましてね」

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