柳家喬太郎、玉川奈々福、ナイツ、神田伯山、豊竹呂太夫。
トップランナーたちが語る自身の現在地と今後への決意――。
神田伯山(講談)
新宿末廣亭の七月上席では、ナイツと同じ夜の部に神田伯山が登場した。
今年二月、真打昇進と同時に講談界の大名跡である神田伯山を襲名。ほぼ同時期に、YouTubeで講談の魅力を伝える「伯山ティービィー」を立ち上げると、二十九日間に及ぶ真打昇進襲名披露興行の様子を、翌日にダイジェストで出し続けた。
他にも講談の連続読みを十九日続けて無料配信するなど、画期的な取り組みが評価され、放送界での大きな名誉であるギャラクシー賞のテレビ部門、フロンティア賞を受賞した。YouTubeのコンテンツとしては初めての受賞となったが、戦後、これだけ講談が注目されたことはなかっただろう。それだけに新型コロナウイルス禍によって高座が奪われたのは痛手だったのではないか。
「個人的には自粛生活に入って最初の一か月は、いい時間が過ごせたかなと思いました。次の仕事に向けての勉強もできましたしね。この四、五年ほどでしょうか、ずっとアウトプットばかりでインプットする時間が持てなかったんです。行き先が見えない列車に乗っているような状況だったのが、いったん落ちついて方向性が見えてきたように思います。ただし、さすがにひと月ほど経つと、『講談がないときついな』と思うようになりまして」
機動力が伯山ティービィーの持ち味だ。その軒下で、五月から「オンライン釈場」を立ち上げた。
「同じ日本講談協会に所属する神田桜子という後輩が、ちょうど五月に二ツ目に昇進したんです。講談界では、前座から二ツ目になると身分が大きく変化します。まず、前座仕事から解放され、高座では羽織を着ることも許されます。もちろん、ひとり立ちしなければならない苦労もありますが、自分で可能性を広げることができるようになります」
桜子は、二ツ目昇進という晴れの高座をコロナに奪われた格好になっていたが、そこで伯山がひと肌脱いだ。オンライン釈場で桜子のお披露目の機会を作ったのである。上野広小路亭で桜子は袴を着用して高座に上がった。
その後もオンライン釈場は継続している。読物だけではなく、講談師の座談会など企画はバラエティに富んでいるが、マネタイズの面など、今後に向けた課題を抱えているという。