しかし、あくまで吉本の社員さんは裏方であり、社員がメディアに出るぐらいならその分芸人さんにスポットが当たるようにするべきだという文化だから……と仰っていました。
また、あまりに岡本社長が激務で、ほとんどプライベートがないまま、いつも朝から深夜まで仕事をされている姿を見て、「なんでそこまで働くんですか? 自分が株主でもないのに……」と聞いたら、「みんな、勘違いしてるかもしれないけど……、結局タレントたちに活躍して欲しいからやってるだけ……」と、ボソッと仰いました。
その数カ月後に、「吉本騒動」が起こりました。
あの出来事に対して言いたいことは山ほどありますが、総じて会社と芸人さんたちのコミュニケーション不足と言えます。
僕の中では、「それみたことか!」という思いと同時に、「なんでこんなに人知れず、人のために裏方で頑張ってる人たちがここまで責められないといけないんだ」と歯軋りするほどいら立ちました。
そういう背景もあり、この本が多くの人たちの誤解(そして、それはコミュニケーションを取ろうとしなかった側の問題です)を少しでも解けたらと心から願います。
最初は大阪の中津で行った複数回にわたるトークショーの内容をまとめる予定でしたが、コロナの影響もあり、最終回のゲストの清水さんとはラジオ番組での対談となりました。また、第5部の大﨑さんと僕の対談はコロナによる自粛を受けて別途行うことになったりもしました。
とにかく紆余曲折があったこの本ですが、結果的には、ありのままの大﨑さんや吉本興業の姿が映し出されたと思います。
芸人さんのコミュニケーション能力は異常なほど飛び抜けていますが、「その裏方」としての意識が強すぎて、あまりに神秘的で奥ゆかしく、外に対して全くコミュニケーションを取ろうとしなかった吉本興業の真の姿を、垣間見て頂けるものになったのではないかと思うのです。
百年以上、日本に笑いを届けてきた会社の過去と未来、そしてその中興の祖、傑物・大﨑洋の「約束」にぜひ触れてみてください。
「カリスマ」とはこういうことかと分かってもらえると思います。
(「まえがき」より)
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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