自然豊かな離島を舞台に、ニート男子4人のドタバタな夏が始まります!
著者の加納朋子さんから読者のみなさまへメッセージが届きました。
音声メディアvoicyの「文藝春秋channel」にて配信した内容を一部、活字にしてお届け!
音声全編はコチラから→https://voicy.jp/channel/1101/92177
<『二百十番館にようこそ』あらすじ>
就活に挫折して以来ずっと、実家でオンラインゲーム三昧の日々を送る“俺”に転がり込んだ伯父さんの遺産は、離島に建てられた館を丸々一棟。なんと無職から一転して不動産持ち!と浮かれた俺だったが、それは両親からの最後通牒だった――。
いきなり始まった離島での強制自立生活。とにかく金銭問題を解決するべく、“俺”は下宿人を募るが、集ったメンバーはそれぞれに事情を抱えた、くせ者たちで……。
加納朋子さんから読者へメッセージ
――『二百十番館にようこそ』、とても癒やされる優しい物語でした。
読み終えた後、「ああ面白かったな」と思ってもらいたいなと、そして主人公たちが「駄目なりにもよく頑張ったね」と言ってもらえればと思いました。現実はままならないことばかりですから、せめて物語ぐらいはと、全方向に大団円のめでたしめでたし、を目指しました。
――シェアハウスに集う4人はゲームが大好きな男の子たちです。
私自身、物語に救われてきた人間です。けれど、薬の飲み方と一緒で、“逃避”にも良し悪しがありますよね。引きこもってゲームばかりしていた主人公は、完全に悪い逃げ方をしていました。そのせいで崖っぷちに追い詰められてしまったわけですが、もちろん彼がオンラインゲームに逃げ場を見つけてなかったら、もっと早く、彼自身が壊れてしまっていたかもしれませんね。
――今回装丁も非常にかわいい作りですね。アニメっぽさもあります。
大好きなイラストレーターの十日町たけひろさんにお願いしました。
私は逃げも隠れもしない、オタクですので、アニメも漫画も大好きなんです。作中にもアニメの雰囲気が漂っていますから、アニメ好きの方には刺さる部分があるかもしれません。そうはいっても、私はライトなオタクなので、オタクでない方でも楽しむことができる作品になりました。
――ご執筆の最中は楽しんで書かれましたか?
ダメダメな登場人物ばかりなのですが、自ら動いてくれる子たちばかりで、とても親孝行な子たちでしたね。お母さんのような気持ちでいます。書いていてとても楽しかったです。
――読者の皆さまにメッセージをお願いいたします。
今はいろいろと困難で、我慢ばっかり強いられるような日々ですが、『二百十番館にようこそ』を手にとって読んでくださった方が、彼らの奮闘にクスリと笑ったり、彼らの住む島、綺麗な海を訪れたような気持ちになっていただけたら、とても嬉しいです。
担当編集者から
全体的にふんわりした空気の作品でありながら、実はディテールがとっても細かい作品で、離島ならではの問題が色々と描かれています。明るく楽しく暮らす住人たちの姿が描かれていますが、島はどんどんお年寄りばかりになっていき、「この島はいつか誰もいなくなっちゃうんじゃないか」「いつか私が最後の1人になったらどうしよう」という未来への不安もどこかに漂っています。医療の問題も出てきますし、離島ならではの雰囲気がよく出ているので、そのあたりもぜひ注目していただきたいです。
個人的に印象深かったのは、短編の予定で始まった作品が、長編として大きなひとつの物語になったことです。『二百十番館にようこそ』の連載が「オール讀物」で始まったとき、加納さんご自身は短編、長くても中編というお気持ちでいらっしゃったんです。ところが第1回の原稿をいただいて、「これはもしかしたらもっとスケールの大きいお話なのでは……」「この先どんなことを予定されてますか」と伺ってみると、「それではぜひ長編で!」ということになりました。結果的に、加納さんも「長編にしてすごく良かったし、長編にしたからこそ、それぞれの登場人物をすごく描けて楽しかった」というふうにおっしゃってくださっていました。もちろん執筆というのは、基本的にとても大変なことですけれど、加納さんは「これは書くの楽しいんです」とおっしゃっていて、担当者としてもとても嬉しかったです。
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