おかげさまで、このたび『無菌病棟より愛をこめて』を文庫化させていただくことになりました。これほど気持ちのこもった「おかげさまで」もなかなかないだろうと、我ながら思うのです。
文庫化にあたり本作品を読み返してみて、入院中にサッカーワールドカップの日本戦を視聴している記述などを読むにつけ、「ああ、四年も経ったんだなあ」と感慨深いです。過ぎてしまえばあっという間だった本作の「その後」について、ざっとつけ加えさせて下さい。
幸い、体調を大きく崩して入院、といった事態には一度も陥っていません。ありがたいことです。ですがさすがに健康優良とは言いがたく、坂道や階段では動悸息切れ激しく、子供の授業参観に行けばたちまち教室の後ろで坐り込み、隣り合ったお母さんに「大丈夫ですか?」と心配されてしまう体たらく……。少し無理をすると確実に寝込むし、無理はせずとも体調を崩すし、体力は全然ないし……といった塩梅。もし私が看護師さんとか保育士さんとか、動きっぱなしで直接人のお世話をするような職業に就いていたら、早期の復帰は難しかったかもしれません。
けれどこれまた幸いなことに、私は小説家……。家から一歩も出ず、椅子に坐ったままでもなんとかなってしまいますし、疲れればそのまま横になって休むこともできます。たいへんに恵まれた環境と言うべきでしょう。相変わらずマイペースではありますが仕事をし、適当に家事もして、家族と旅行したり、人と会ったり、けっこう楽しい毎日です。生きているって本当に素敵!
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