- 2016.10.27
- 書評
家族は時として呪いにもなる――心優しき中年新米探偵と謎の美少女コンビ再び
文:大矢 博子 (書評家)
『虹の家のアリス』 (加納朋子 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
『螺旋階段のアリス』(文春文庫)に続く、アリスシリーズ第二弾である。
本書は、気鋭の本格ミステリ作家が集結した叢書〈本格ミステリ・マスターズ〉の一冊として二〇〇二年に単行本が刊行され、二〇〇五年に文春文庫入り。このたび前作に引き続き、新装版でお届けできることになった。
著者にとっては、ちょうどデビュー十周年に出した十作目の本というメモリアル作品でもある。だが、そのメモリアルは決して数字上のことだけではない。
この作品の前に出たのが、のちにシリーズ化され映画にもなった『ささら さや』(幻冬舎文庫)。この時期、著者はお家芸の〈日常の謎〉系謎解きミステリに、家族や地域コミュニティといったテーマを強く重ね始めた。さらに本書には、のちの『少年少女飛行倶楽部』(文春文庫)や『トオリヌケ キンシ』(文藝春秋)につながるような、病気や障碍が重要な鍵となる短編が複数、収められている。
つまり本書は、意識的か無意識かはさておき、著者が〈現在の加納朋子〉に向けて舵を切った、その変換期の作品なのである。そういうことを踏まえて本書を読むと実に感慨深いのだが、まずは前作からの流れと、本書の収録作を紹介しておこう。
なお、このシリーズは連作短編の形をとっており、事件とその解決は個々の短編で完結しているのでどこから読んでいただいてもいいのだが、全体を通したテーマがあるため、前作と併せて読まれることをお勧めする。
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