2016.09.28 書評

『アリス』で開眼!? 知りたい気持ちが喜びに繋がる物語の力

文: 藤田 香織 (書評家)

『螺旋階段のアリス』 (加納朋子 著)

『螺旋階段のアリス』 (加納朋子 著)

 まずはひとつ質問を。みなさんは「アリス」のことを、どれぐらい御存知ですか?

 水色×白のエプロンドレスに、金髪リボンがトレードマークの、ディズニーの人気キャラクターでもある彼女のことを、まったく知らない、という人はまずいないはず。二〇一〇年の春に公開されたティム・バートン監督の映画『アリス・イン・ワンダーランド』を観た、という人も多いかもしれませんね。原作から十三年後の、アリスは十九歳という設定で、癖のある、と言うか、くせ者そのものの「帽子屋」マッドハッターを人気俳優ジョニー・デップが演じたことでも注目を集め、日本でも大ヒットした作品です。ちょうど今年、二〇一六年夏には、続編となる『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が公開され、映画館の前では母娘連れの姿もたくさん見かけました。どうやら今の子どもたちは、絵本や児童書よりも先に、映画やDVDでアリスを知ることも珍しくないようです。

 昭和四十年代前半生まれの私のファースト・アリスは、絵本でした。でも、あいにく当時の私にはアリスの世界はちょっと馴染み難く、公爵夫人(もちろん公爵が何たるかなど知らなかったわけですが)やハートの女王を恐れて、好んで読み返すことはなく、長い間、アリスの物語には「不思議」で「怖い」というイメージがあり、詳しく知りたい、という気持ちにはなれませんでした。恐らく、同じようにキャラクターとしての「アリス」は知っているけど、実はルイス・キャロルが描いた原作『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』のストーリーはよく知らない、という人は案外多いのではないでしょうか。

 二〇〇〇年に単行本が刊行された本書『螺旋階段のアリス』(文藝春秋→文春文庫)は、アリスの世界をよく知っている人にとって、思わずにやりとしてしまう場面が散見する物語です。でも、だけど。安心してください! たとえ原作に詳しくなくても、まったく問題はありません。むしろ、ここから世界が広がっていく、そんな読書の楽しみを存分に味わえることを、確約させて頂きます。

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螺旋階段のアリス
加納朋子・著

定価:本体610円+税 発売日:2016年09月02日

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