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若林正恭「本気であれば伝わる、と信じている」

若林正恭「本気であれば伝わる、と信じている」

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』刊行記念


ジャンル : #随筆・コミックエッセイ

『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』(若林 正恭)

――あとがきに、「モンゴルには定住しない家族を、アイスランドには自然を見に行った」と書かれていました。改めて、書き下ろし部分で書かれたモンゴルとアイスランドには、なぜ行かれたのですか?

モンゴルは、子供のときにドキュメンタリーで、「定住をしない家族」を見て、子供心に信じられなかったので、いつか見てみたいという気持ちがありました。自分が毎日帰ったり外出したりするこの家が動いていく、っていうのは何なんだろうなって。それから実際、草原がずっと続いてる景色をどうしても見たいっていう、不思議な、言葉では言えない気持ちもありました。実際、あの景色を見て、僕のルーツはモンゴルにあるんじゃないか、っていうぐらい、「懐かしい」と思ったんですよね。
アイスランドは、まず仲の良い友達が普通におすすめって言っていて、なんで?って聞いたら、「地球の地面が生まれてくる場所だから」って返ってきた答えに惹かれました。「生まれてくる」っていうのは、地球自体も生きている、活動しているものなんだなって思えて。東京みたいにコンクリートとかアスファルトに地面が覆われていると、地球が生きてるって、なかなか見えないじゃないですか。

――その国々で個性的なガイドさんや人々に出会いますけれども、もう1回会いたい人はいますか?

またみんなと話したいんですけど、一番はモンゴルで乗馬を教えてくれたバヤル。彼は、結婚もせずに日本に行ったりモンゴルに戻ったり、乗馬のガイドを何カ月かやってまたすぐ働かない、というのを繰り返していて、親にめちゃくちゃ怒られてるらしいんです(笑)。だから、お前どうなった?っていうのはちょっと聞きたい。やたら日本の女の子は最高だって言ってましたね(笑)。

――一方で、旅先で会った人と「では、また」と言って別れるときに、その「では、また」はほぼ叶えられないだろう、でもそんな「では、また」が好きだ、とも書かれていました。

綺麗ごとみたいになっちゃうんですが、自分の中では、思い出して、「あの人、元気かな」と思うことが、既にその人とまた会っているって思うんです。僕は親父が死んでしまって会えないんですけど、でも思い出すと会っている、そういう実感があるんです。だから、旅先で会った人とも、実際にFacebookで探して会うことまではやらない。

――モンゴルでは「理想の夫婦」に出会いました。その時は独身だった若林さんが、結婚願望について考え、昨年末、実際にご結婚されたわけですが、奥さまとは「理想の夫婦」へと近づいていますか。

僕は自意識過剰で、ナルシストな部分も抱えているので、奥さんと一緒に生活するようになってから、本当に自分のことしか考えて生きてこなかったんだな、って反省してますね。テレビを見るにしても、見たい番組を1人で見ていたので、普段自分の感覚では見ない番組を外からの刺激として見ると、今こういう人たちいるんだ、と思ったり。ドラマを1クール全部見てみたりしたのも、20年ぶりぐらいで、新しい発見があります。あと、例えば物を出しっぱなしにしておくと怒られるとか(笑)。

©️文藝春秋

――奥さまの距離感は、若林さんに近い?

人間の欠点にかなり寛容な人なので、僕の欠点もすごく笑ってくれるし、そこが良かったですね。ただ、僕の周りは、結婚生活が長い人もいるから、新婚のうちはね……みたいに言われる。そこは未知のゾーンなので、恐怖心もあるんです。そこはもう新人で研修中、みたいなところで(笑)。

――今後もこういう風に旅をして書くことは、していきたいですか?

それが、「あとがき」にも書いたんですが、もう行きたい国っていうのがなくなっちゃったんです。ここまで書いて本にしておいて申し訳ないですけど、1回シンプルにハワイに行きたいな、って(笑)。でも、ハワイとなると書けることはないだろうなと思います。

――もし奥さまと一緒に行きたい、奥さまにこの景色を見せたいという場所があれば教えてください。

アイスランドの花火ですね。僕は花火が熱中できる趣味なんですが、この間、2人で江ノ島で夜にロケット花火やってたら、奥さんがかなり楽しそうだった。でも、アイスランドの花火はこんなもんじゃないんだ、っていうのを見せてあげたいです(笑)。

文春文庫
表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬
若林正恭

定価:792円(税込)発売日:2020年10月07日

単行本
ナナメの夕暮れ
若林正恭

定価:1,320円(税込)発売日:2018年08月30日

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