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マスコミ露出の多寡ではわからない「知事の実力」とは? 前鳥取県知事が自らの体験を元に解説!

マスコミ露出の多寡ではわからない「知事の実力」とは? 前鳥取県知事が自らの体験を元に解説!

片山 善博

『知事の真贋』(片山 善博)

出典 : #文春新書
ジャンル : #政治・経済・ビジネス

『知事の真贋』(片山 善博)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対し、当初の国の対応はいかにものんびりしていたようです。どうみても迅速さと緊張感に欠けていたとしか思えません。中国武漢で感染爆発が起きた時、速やかに中国からの入国を制限しなかったことからもわかるように、早晩わが国にも感染が拡大するかもしれないとの認識はなかったようです。

 安倍政権のもとで政府はクルーズ船を含めて外国からの観光客誘致にはことのほか熱心でした。ただ大勢の人が来日すれば、一緒に感染症も入ってくるかもしれないとの心配はあまりしていなかったようで、必要な準備を怠っていました。それは、外国のクルーズ船に対して内外の法律の適用関係すら整理できていなかったことや、対応が泥縄式だったことからも察せられます。

 そもそも、政府の中枢には経済や治安に通じたスタッフを揃えている割には、国を危うくするかもしれない感染症について理解力のある人はいませんでした。もちろん中枢にいなくても、所管官庁にこの分野の専門家が何人もいればいいのですが、報道などで知る範囲では必ずしもそうではなさそうでした。

 一方、それでは都道府県の側はどうだったでしょうか。感染症対策は外国との水際作戦は国が担当し、国内での感染予防は都道府県が中心的役割を担っています。そこで、このたびの新型コロナウイルス対策に適用された新型インフルエンザ等対策特別措置法では、新しいタイプの感染症対策を実施するための行動計画を作成し、国に報告するよう都道府県知事に義務づけています。

 おそらく、どの都道府県でもこの行動計画を作成していたはずです。ただ、いざという時に計画を的確な行動に移せるだけの準備と体制が整えられていたかどうか。自治体は往々にしてこの種の計画を国に報告するために作成し、後はお蔵入りという例が多いようです。

 最近では地震や風水害などへの警戒を怠らず、地域防災計画の見直しを行ったり、防災訓練に余念がなかったりする都道府県は多くなりました。いいことです。ただ、それと比較して、感染症予防対策はどうだったでしょうか。計画の点検や訓練などに力を入れてきた都道府県がどれほどあったでしょうか。

 また、自治体は国から再三にわたり職員定数削減や行政組織のスリム化を求められ、行政改革に勤しんできました。その一環として保健所の統廃合や職員削減を行った結果、ひところに比べて保健所の力量が低下したことは否めません。

文春新書
知事の真贋
片山善博

定価:880円(税込)発売日:2020年11月20日

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