――「名指し」では、町名主を失った四町を麻之助がしばらく預かることになりますが、麻之助の、お気楽でいるようで、実は頼りがいのあるところが発揮されていますね。
発揮されるといいのですが(笑)。支配町の人たちも、そんな麻之助にやいのやいのと言うのが楽しいんだと思います。町名主の支配町は、きっちりまとまっていたわけではなく、いろんな事情で変わることもあったようなので、今回はそんな騒動を描いてみました。麻之助も吉五郎も、跡取りとして成長してきているのかもしれませんね。
――本作の結びとなる「えんむすび」「いわいごと」で物語は急展開を迎え、麻之助の縁談は意外な形にまとまります。
「まんまこと」シリーズは、私が書いているものの中でも時間の流れと物語の動きが早いんです。悪友三人組の中でも、八木清十郎はすでに妻を迎えて子どももいますから、いずれ、麻之助や吉五郎も新しい家族を持つことになると思います。そんな彼らのこれからを、読者の皆様にも見守っていただけたら嬉しいです。
――今年で作家デビュー20周年を迎えられますが、これまでの作家生活を振り返っていかがですか。
あっという間でした。気がついたら20年も経っていたという感じです。一番大変だったのはデビューしてから2作目を出すまでで、勝手に書いて、書き上げたら編集者に読んでもらって、原稿がたまったから一冊にしてもらって……という感じでした。逆に、新しいシリーズを増やすのには苦労しませんでしたね。私は先に漫画でデビューしたので、まずは短編を一本載せてもらって、それで描けそうならそこからシリーズ化していくということができないと、お仕事ができなかったんです。
今でも、新しいシリーズを考えるのは楽しいのですが、あんまり増えてしまうと書くのが大変で(笑)。
――今年から、オール讀物新人賞の選考委員も務められます。
新人賞の選考委員は過去に一度だけ担当して以来なので、楽しみにしています。応募者へのアドバイスは、なるべく締切の少し前に仕上げて推敲をしましょう、ということでしょうか。そのほうが確実に仕上がりがよくなりますから。まずは読者として、どんな応募作が読めるのか楽しみにしています。