
依存症はわが国で最も多い病気
実は、わが国で最も多い病気の一つが依存症である。たとえば、喫煙人口は着実に減っているとはいっても、まだ一八〇〇万人を超えている。三〇代、四〇代の男性のおよそ三分の一は喫煙者である。
アルコール依存症は、推計によれば一〇九万人とされている。また、その予備軍を含めると二五〇〇万人ほどだという。ギャンブル依存症が疑われる人は、国民の三・六%と見積もられており、これは先進国中最多である。数にすると、三〇〇万人を超えている。中高生のインターネット依存は九三万人という調査結果が出ており、これは五年間でほぼ倍増している。
もちろん重複している人もたくさんいるが(タバコも吸うし、大量の酒も飲むなど)、これらの数字を単純に合計するとこれだけで約五〇〇〇万人となる。
さらに、「仕事中毒」などと言われるように、過度に仕事に依存している人も相当数いるだろう。糖にも強力な依存性があるため、ダイエットしようとしても、炭水化物(米、麺類、パン)や甘いものをやめられない人は、糖への依存症である可能性が大きい。これらの食物はわれわれの「主食」であり、あまりにも日常的なものであるがゆえに、統計があるわけではないが、炭水化物や糖に依存している人は、何千万人もいるだろう。
犯罪としての依存症も見てみよう。日本は世界的に見ても薬物使用人口が非常に少ないが、それでも毎年一万数千人ほどが覚醒剤取締法違反で検挙されている。再犯率は三〇%ほどだと言われており、あらゆる罪種のなかで窃盗(約三四%)に次いで二番目に高い。
一番再犯率が高い窃盗を繰り返す人のなかには、クレプトマニアと呼ばれる窃盗癖の人が一定数いる。これも依存症であるととらえることができる。
また、痴漢や盗撮も再犯率が高い犯罪である。これらの性犯罪を繰り返す人の多数も、性的依存症であると考えられる。警察庁の統計を見ると、痴漢と盗撮で毎年それぞれ三〇〇〇人ほどの人々が検挙されている。検挙されるのはもちろん、氷山の一角であるので、実際に痴漢や盗撮行為を行っている者が何万人もいておかしくない。
このように、犯罪であるかないか、健康や生活に及ぼす害の大きさなど、さまざまな違いはあるにしても、依存症やその予備軍は「国民病」あるいは「現代病」と言っていいほど、現代の日本社会に蔓延していると言っても過言ではないだろう。
-
『終わらない戦争』小泉悠・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2023/09/20~2023/09/27 賞品 『終わらない戦争』小泉悠・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。