人生を疑似体験できるフィクションの世界を
今、満足に遊びに行けないし、仕事もなにかとイノベーションを求められるし、つい最近まで一生懸命生きてきたのにそれを否定されている気が時々するんです。だから、映画でも本でもいいんですけど、「フィクションに逃げる」ことが絶対必要なんじゃないかと思うんです。
フィクションの世界は、自分ではない目線で物事を見ることができます。私にとってこんないいリフレッシュはないし、人生を楽しく生きる糧になる気がします。こんな閉塞感のある時代に、ビジネス書読んで、ドキュメンタリー番組見て、すぐにインプットとかアウトプットとかで例えられる人生、自分の人生で手一杯だと疲れちゃいませんか。
本屋や図書館に行くとワクワクするのは、あれだけある本それぞれに主人公がいて、主人公の数だけ人生があると想像できるからだと思います。自分が登場しない物語、人ごと気分で楽しめるフィクションの余白って、こんな時代だからこそ本当に大切。今後、仕事に忙しいビジネスパーソンがどんどんChaptersのユーザーとして増えて、そんな人ごと気分でフィクションを楽しむサービスになれたらいいなと密かに願っています。
──本が人生に与える影響の大きさを考えると、選書のハードルってすごく高くないですか。
森本 めちゃめちゃ高いですよ。だから、選書は絶対に1人でしないようにしています。例えば私が選書して私が届けると、そこに入っている視点は私しかいませんよね。いろいろな方の価値観があることが面白いと思うので、「Chapters」では現役の書店員や出版社を推薦者に立て、それを私が「味見」という立場で読み、冒頭100ページを読んで続きを読みたくなる本をラインナップしています。味見に関しては、データではなく個人の感性に直感に頼る部分が多いのですが、お客様に日々向き合う私自身が「味見」することが、一番お客様に近い感覚で選べる気がします。
本を読んでみたいけれど選べない人たちに応えたい
──サービス利用者は、もともとの本好きが多いんですか。
森本 お客様の約7割は、「Chapters」をきっかけに読書を始めた方です。
せっかく「本」の世界に来てくれたので、「本って面白い」と思ってほしいし、「また読みたい」と思ってほしいので、出版社の方にも選書を手伝ってもらうように選者を拡大しました。
みんな「面白い本を読みたい」と言うんですけど、何を「面白い」と思うのかは説明できない人が多いんです。「伏線が張り巡らされて、最後にそれがうまく回収される伊坂幸太郎みたいな本が読みたい」とか、「東野圭吾より弱めのライトミステリーをいま欲している」と表現できる人は、自分で選びますから(笑)。本を読んでみたいけれど選べないという人は、「疲れている」「ほっこりしたい」「どっぷり本に浸かりたい」といった気持ちの先に「面白い本が読みたい」という思いがあるので、「Chapters」ではそこに応えていきたいなと思っています。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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