季節やトレンドをふまえて設定されるテーマに基づいてセレクトされた文庫本を扱うオンライン書店「Chapters」。本の購入履歴をベースに、同じ選書をした人同士がつながって本の感想を共有できるビデオチャット「アペロ」の運営など、本を通した人との出会いをデザインしています。創業者の森本萌乃さんにお話を聞きました。(全2回の1回目。続きを読む)
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お金がないけど幸せ
──大学時代にソングリーディングのサークルを立ち上げ、新卒で入社した電通は4年で円満退職して起業。ご経歴をうかがうと、人生の成功街道を歩み続けていらっしゃいます。
森本萌乃さん(以下、森本) ありがとうございます。めっちゃ気持ちよくなってきた(笑)。でも残念ながら実態は「成功者」とはほど遠いです。起業後1年半は自分の給料も出せないくらいでしたし、融資してもらった借金1千万円近くを返すのに今も必死ですから。
新卒で電通に入社した時は、正直自分でも「人生勝った」となぜか思いました。憧れ続けた会社だったので、内定通知をいただいた時は、それはそれは嬉しかったですね。まさか4年で辞めることになるとは考えてもいませんでしたし、その後自分が起業することになるとは思ってもいなかったです。
電通時代は、ジミーチュウのファミリーセールに行って、夜は西麻布で2万円のディナーを食べ、毎日スタバのコーヒーを飲んで、という典型的なブランド志向。いまは生活が一転し、古着を着てコンビニコーヒーを飲んで、全く違うライフスタイルになりました。
でもそんな毎日が惨めかというと、これが意外に幸せで充実しているんです。
あ、このおしゃれオフィスの立地だけ見たら成功者と言ってもいいかもしれませんよね(笑)。
──「惨めに感じない」理由は、どこにあると思われますか。
森本 不安はたくさんあるけれど、人生に不満がなくなったからだと思います。会社に属している時は、「こんな頑張っているのに!」と不満が爆発することもありましたが、そういう不満がいま一切ないんです。
サービス開発中は、目の前にお客様がいないので「こんなことをしていて本当にいいのかな」と迷うこともありましたが、サービスを開始した現在は、お客様にリアルに評価していただけるので、精神的に安定したというか、自分でやりたいことができている喜びを実感しています。「お客様に喜んでいただき、その対価が給与として自分に返ってくる」というのが自分の性に合ってるみたいです。