- 2021.06.17
- 特集
もうすぐ98歳、「佐藤愛子の世界」は何を言っても許されるか!?
文:「オール讀物」編集部
オール讀物創刊90周年記念編集 文春ムック 「佐藤愛子の世界」
ジャンル :
#小説
,#エンタメ・ミステリ
「オール讀物」で20年間連載された「我が老後」シリーズや、自身最後の長編小説『晩鐘』の連載をはじめ、佐藤愛子さんは創刊90周年を迎えた「オール讀物」と、大変ご縁の深い作家です。そこでこの度、若かりし頃から全力で執筆を続けてきた、作家・佐藤愛子の足跡を網羅した文春ムック「佐藤愛子の世界」が刊行されることになりました(電子書籍も同時刊行)。
このムック本の最大の特色は、佐藤愛子さんが〈責任編集〉という形で、目次ラインナップを厳選されたことです。中でも「ぜひ若い方にも読んでほしい」という小説については、直木賞受賞作「戦いすんで日が暮れて」、芥川賞候補作「ソクラテスの妻」、生涯最高傑作と自選する「オンバコのトク」、珠玉のユーモア小説「沢村校長の晩年」の4作品の全文が掲載されています。作品毎に当時の直木賞選考委員・松本清張さんや水上勉さんの選評や、佐藤愛子さん自身による解説が加わり、それぞれの短編をより深く味わうことができるでしょう。
また、作家修業に明け暮れた日々を随想「それは淀んだ暗い沼の中だった」「暇あって金なし」「文芸首都の若僧たち」で綴り、又吉直樹さんとの対談では「人生には貧乏が必要だ」と、語り合います。さらにデビュー後も夫の事業失敗で莫大な借金を背負い、その驚きの顛末については、小池真理子さんとの対談「夫婦作家の悲喜こもごも」や、遠藤周作さんや北杜夫さんとの思い出交遊録などで述べられています。
もちろん佐藤愛子さんの代名詞といえる抱腹絶倒のエッセイも掲載。今回のために書き下ろした「みんないなくなってしまった」の中では次のように記されました。
秋になれば私は98歳になります。何もかも面倒くさい。なるようになればよろしい、と思ってしまう。大雑把な記憶ははっきりしているけれど、細かいこととなるとわからなくなる。わからなくても別に困らないから、わからないままほうっておく。
「ごめんなさい。すっかりボケてしまって」
といえばそれですみます。家の者はそれに馴れて、すっかりボケ婆さんあつかいを心得ているのがいっそ気らくでいいのです。(直筆ラストメッセージより)
その他、「愛子の小さな冒険」と題された1970年の大阪万博のエピソードは、東京五輪開催に揺れる今だからこそ、50年の時を経ておかしみが倍増されています。類まれなる才能で読者を楽しませ続けてきた、佐藤愛子さんのすべてが詰まった〈丸ごと愛子〉の一冊を、完全保存版としてぜひお手元に!
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