自分が年齢を重ねるほど、親も年を取り老いていく。誰しも頭では理解していることだが、現実にそうなったらいったい何が起きるだろうか。
「長寿」や「敬老」といった言葉があるように、一般的に親の長生きは子の願い、高齢者を敬い労わるのは当然のことと思われている。実際、親の老後を支える人は多いし、そこには深い愛情や信頼もあるだろう。
一方で老いた親との関係に悩み、苦しむ人もいる。たとえば「毒親」を持つ人たちだ。
毒親とは十数年前から使われる造語で、スーザン・フォワードの著書『毒になる親』(一九九九年・毎日新聞社、二〇〇一年・講談社+α文庫)がもとになったとされる。フォワードは著書の中で、「毒になる」という強烈な表現の理由を次のように述べている。
──世の中には、子供に対するネガティブな行動パターンが“執拗に継続”し、それが子供の人生を支配するようになってしまう親がたくさんいる。(中略)そういうたぐいの親を一言で表現するのにぴったりな言葉はないものかと考えるたびに、頭をよぎったのは、「有毒な」とか「毒になる」という言葉だった。ちょうど公害を引き起こす有毒物質が人体に害を与えるのと同じように、こういう親によって子供の心に加えられる傷はしだいにその子供の全存在にわたって広がり、心を蝕んでいくからである──。(『毒になる親』講談社+α文庫より抜粋)
フォワードが言う毒親は、子どもにあきらかな悪影響を及ぼし、その心身を蝕み壊してしまう存在だ。日常的に暴力をふるったり、何かにつけて罵ったり、必要な世話を怠ったり、支離滅裂な言動で振りまわしたりするような親、そう考えるとわかりやすい。