小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。誰も本当のことを教えてくれなかった。なぜ自分だけが、こんな目にあうんだろう――上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。
ここにいるのは、出会いと決断があったから。
兼近大樹さんの初小説『むき出し』に届いた読者からの感想を公開したところ、さまざまな反響があり、さらに多くの感想が届いています。
その中からの一部を、第3弾としてご紹介します。
学校や社会で求められる『普通』に当てはまらない人間が、唯一自分に残されたものだけを頼りに生き抜く姿が切なくて、だけど地中に埋まったダイヤモンドのように彼らが光って見えました。
それは彼らが未来ある子供だということ。どんなに汚れて見えても、知らないだけ、説明すれば問題を起こさなかったかもしれない。
大人が未来ある若者に矛盾を押し付けないで、守ってあげなければというメッセージにも感じました。 (しほ)
この本は、読む人の立場によって受け取り方が変わるんだろうな、と思わせてくれる本でした。
私は、小学生の子供を持つ母親の目線で読みました。
時々、子供が何を考えているのかわからない、何で言うことを聞かないのと思うことがあるのですが、石山少年が小学校の先生に怒られているシーンで、「先生は言うことを聞けと言うけど僕の言うことは聞いてくれない」みたいな心の声があり、「先生」の部分を「お母さん」に置き換えて自分に言われているような気持ちになってしまいました。
私が普段、どれだけ子供のことを理解して、子供の気持ちに寄り添ってあげられているのかということを考えさせられました。
私の子供も、端から見ればふざけていたりしても、小さい頭と体で、いろんなことを考えていて、見ていないようでちゃんと周りのことも親のことも見ているんだろうなと思います。(ぴーちゃん)
誰かを100%理解することはできないけど、双方が知ろうとする気持ち、労る気持ち、相手の立場でものを視る気持ち、今の社会にはとても必要な能力と感じました。(kumI)
読み終えた時、この男のこれからが見たいと感じた。
それと同時になんとも言えない愛情が石山に芽生え、これからの人生、できることなら彼のように生きていきたいと憧れている自分がいた。
石山が今、心から笑っていてくれることを祈る。
もし心に陰りが生じてもきっと彼にはそれを振り払える力がある、そう信じている。太陽のような人、そう感じた。強く憧れる、彼のように生きたいと。(Mingmei)
時代背景に合わせ成長と共に変化していく語り口調、情景描写、状況表現は景色が浮かびあがり頁を開いた瞬間からまるで絵本を読んでる様な感覚でエントランスはとても入りやすい。
今を不満に思っている若い方、本が苦手な方多くの方に是非手にとってほしい(ハル)
親に心配をかけ続けた若い頃をへて、今は2人の母になり石山側の気持ちになったり、大人側の気持ちになったりしながら読み進めました。
息子は石山に似ています。ヤンチャを繰り返してやっと落ち着き始め、外の自分と内の自分のギャップに苦しみながら、「大人は大変だ。人の話に耳を傾けると何が正解かわからなくなる。俺は面倒臭せえ奴だ」と、もがく毎日です。
「むき出し読んでみ!読み易いし、あんたに似てるよ。石山が近くにいたら友達になれたかな? 自分の正義のぶつかり合いになったかな?」と。なかなか読み進めていかない20歳の息子と「むき出し」を語る日がくるのを密かな楽しみに。(鈴木)
この本を読んでから、心に重い何かを落とされたような感覚になりました。石山の生まれ育った環境を可哀想だと思うことじゃない。石山の過去の罪を受け入れ、許すことじゃない。石山があの世界から抜け出したことに感動することじゃない。これを読んだら人に優しくなれるよーなんて、そんな軽い物語じゃなかったです。
自分の正解が全てじゃないことを理解することの重要さ、相手の人生を想像することの重要さをズドンと重く心に落とされたような物語でした。
意見が対立しても、自分の正解が全てじゃないって分かっていれば、嫌なことをされても、その人の人生を想像することができれば、攻撃なんてできない。この本が広がれば、今よりも優しい世界が出来るはず。そんな期待を持ってしまう本でした。(茂木)
『むき出し』を読むまで、自分は至極普通な人間、平々凡々な人生だと思って生きてきましたが、本当はとんでもなく桁外れに恵まれていて、幸せにあふれている人生だと、気がつかせてくれました。
『むき出し』に出会った今は、 ”自分にあるモノ” を最大限みつけて、数えて、生きていこうと思えます。誰かが少しでも幸せに、楽しく、平和に、より良く生きるために自分の生命をつかっていきたいと考えるようになりました。もう自分を主語にして生きるのは終わりにして、どこまでも傲慢に「普通」をふりかざして生きてきた自分と決別。
これから先「自分に影響を与えてくれた本」を聞かれることがあったなら、兼近大樹さんの『むき出し』を挙げると思います。それほどまでに、深く、容赦なく、自分を「むき出し」にしてくれる小説でした。(eee)
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