畠中恵さんの「まんまこと」シリーズのイラストレーションを担当しはじめてから、もう16年が経ってしまったらしいです。
担当の方にそう伝えられたけれども、あまりピンときていない。私はいま74になるんで始めたころは58歳でした。
江戸時代の人だったら、とっくに亡くなっている年齢だろう。まだ生きているんだから、ありがたいことだと思いました。
江戸時代の10歳まで生きた人の平均余命は男52.4歳、女50.6歳だそうです。ですがまァ、平均余命だの寿命だのは、結局、だれの命でもないんで、こんなことを言っても知っても、どうということはありません。
葛飾北斎は、百ちかくまで生きたんだろ?と思ってたら、インターネットによると、88歳ということでした。
ちなみに、徳川家康は73歳、毛利元就は74歳まで生きていたそうですが、私の今の年齢と、どっこいどっこいです。
私がコドモの頃に読んだ、コドモ用の「日本の歴史」の本には、
「徳川家康は天ぷらを食べすぎて死にました」
と書かれてあって、私は「この本を書いた人は豊臣方だな……」と思いました。
この書きようでは、まるで徳川家康が、なんだか大食い大会に出場して、死ぬまで天ぷらを食べていたようです。
「人聞きが悪い」
と、身内の方なら、思うんじゃないでしょうか。
私は、いまNHKの大河ドラマ『青天を衝け』を毎週見ていますが、北大路欣也さんが「こんばんわ徳川家康です」と言って出てくるたんびに笑っていました。
徳川家康が、狸親父とほんとうに言われていたかどうかは知りませんが、絵で見る徳川家康は、ほんとうに狸親父と言われても「さしつかえない」という顔に描かれているからです。
ひきくらべると、北大路欣也さんは、いかにも若すぎる。と思っていましたが、先刻、言及いたしました通り、徳川家康は73歳で亡くなっているわけですから、ずっと若く見える北大路欣也さん(78歳)のほうが、5歳も年上なんでした。
私は「さまざまなことにくわしくない」のですが、江戸時代についてもくわしくないので、いつもひやひやもので仕事をしています。たとえば、女の人の髷(マゲ)の結い方ひとつとってみても、あまりにも沢山の種類があるうえにどちらが先に流行(はや)っていたのか、どういう人の髪型がこうこうで、こうこうじゃなかったのか、少しもわかりません。
そのうえ、資料として残っている絵は、かならずしも、髪型が、どのような構造になっているのか、しっかり描かれていず、その髪型は遊女のしていたものなのか、武家の娘のものなのか、まちがいのないように、詳しく調べようものなら、とんでもない大仕事になってしまいそうです。