エプロン姿の山岸凉子さんがふらりと……少女漫画家12人に家の話を聞いたら「漫画の歴史」になった
- 2022.02.24
- ためし読み
漫画家の家と聞いて、まず思い浮かべるのは、手塚治虫や赤塚不二夫らが若き日を過ごした伝説のアパート「トキワ荘」でしょうか。あるいは、萩尾望都さん、竹宮惠子さんが一つ屋根の下に暮らした「大泉サロン」を挙げる方もいるかもしれません。
私たちの心をつかんで離さない作品の背景には必ず、漫画家が仲間やアシスタント、そして編集者ら、気の置けない仲間たちとつどい、切磋琢磨した特別な空間があります。
本書は、二〇〇四年から二〇二一年に掲載された「週刊文春」の「新・家の履歴書(前身は「家の履歴書」)」のうち、少女漫画の黄金期である一九七〇年代までにデビューした十二名の漫画家の記事を編んだものです。この連載は、一九九四年に始まる長期連載で、これまで暮らしてきた家の思い出を軸に半生を振り返っていただく企画です。
家の「履歴」を紐解きながら、その時に執筆していた漫画についてもじっくり語っていただきました。その意味で、本書は少女漫画の全盛期に燦然と輝いた傑作の数々を舞台裏から描いたガイドであり、漫画家たちの核となった原風景を語った貴重な証言集です。今でこそ少女漫画は女性が描くのが当たり前ですが、一九五〇年代半ばまでは、少女漫画の多くを男性漫画家が手がけていました。冒頭に挙げた「トキワ荘」に暮らした唯一の女性である水野英子さんを皮切りに、時代を象徴する少女漫画家にインタビューした本書は、日本に花ひらいた漫画文化の個人史とも言えます。
ここ数年、萩尾望都さんの『一度きりの大泉の話』(河出書房新社)、竹宮惠子さんの『少年の名はジルベール』(小学館)等の回想録が相次いで発売され、注目を集めました。これらの著作が、この本を刊行する上で追い風となったことは間違いありません。
取材時には、青池保子さんが手ずから見事な間取り図を描いてくださったり、山岸凉子さんが気取らぬエプロン姿であらわれたりと、随所で漫画家の素顔に触れる機会を得ました。特に私たちを驚かせたのは、言葉だけで情景をありありと浮かび上がらせる漫画家の映像的な記憶力でした。
本書が、十二名の漫画家による素晴らしい作品の数々をさらに楽しんでいただくきっかけとなれば幸いです。
編集部
(「はじめに」より)
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