本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
祝! 現役復帰 。大迫傑に感じたロマンから生まれた、ノンストップ・サスペンス――『アキレウスの背中』

祝! 現役復帰 。大迫傑に感じたロマンから生まれた、ノンストップ・サスペンス――『アキレウスの背中』

構成:第二文藝部編集部

長浦京さんインタビュー


ジャンル : #エンタメ・ミステリ

破壊的な国際テロリスト集団からランナーを守れ!

 今作のもう一つの読みどころは、女性刑事が、国際テロリスト集団に立ち向かう、緊迫感あふれるサスペンスであることだ。

 優勝者となれば高額の賞金を得ることができるレースは、アスリートやベットする観戦者たちの熱狂を生み出す。

 スポーツメーカーによる最先端のランニングギアの開発競争は、まるでF1レースのようであり、巨額の金額が動くビジネスであるため、中国やロシアなど大国の思惑も絡み合っていく。

 大会まで1カ月となったとき、レースへの参加をやめなければ、本人および家族の「命にかかわることが起きる」という脅迫状がランナーに届く。

 この捜査にあたるのが、もう一人の主人公の女性刑事だ。新手の犯罪に対応するために、警察庁が発足させたミッション・インテグレイテッド・チーム(MIT)に招集され、リーダーに任命される。

 テロリストは、ランナーへの脅迫だけでなく、関係者への様々な妨害工作を仕掛けてくる。

 こういった見えない敵に対峙する不安を抱えたまま、女性刑事はランナーと交流を重ねていく。

「連載をはじめるにあたって、編集者から『主人公の刑事が大きなトラウマを抱えていて』というような設定はもういらないですよね、というディレクションを受けました。私が書きたかったことと一致したんです。

 日々暮らす中で、何の不満もなく、万全の状態でいられるひとって、ほとんどいないはずで、誰もが小さな傷を抱えていると思うんです。自分自身を引っ張っていってくれる、小さなモチベーションを丁寧に描いて、警察組織の中であがきながらも、困難に挑む女性刑事の姿を描いたつもりです」

 天才ランナーに寄り添い、テロリストに対峙する、ごく普通の人間として描かれた女性刑事の等身大の葛藤と成長が、読み手の胸に迫る。

 攻撃性や行動パターンが日本の犯罪者とは比較にならない、国際テロリスト集団の襲撃から、ランナーと大会を守ることができるのか。

デビュー10年目に抱いた確信。

「2011年に『赤刃』(小説現代長編新人賞)でデビューしてから10年が経ちました。2作目の『リボルバー・リリー』では、映画を見るような小説を作りたいと、3作目の『マーダーズ』では、自分の暗部に秘めた欲望をストレートに吐き出す、4作目の『アンダードッグス』は、中高年の読者の胸を躍らせたいというテーマをクリアすることにこだわっていました。今作は、多くの読者に受け取ってもらうためにどうすればいいか、納得がいくまで取り組むことができました。

 個人的なことですが、コロナ禍で手術を受けることになって、よせばいいのに手術の翌日に点滴をぶら下げながら、ゲラに赤字を入れていました(笑)。なぜそこまでしたんだろう、と振り返った時に、やっぱり楽しかったんですよね。この物語がどうなっていくのか、自分自身に期待をしながら、書き続けることができた小説でした。本当の意味での胸をはれる『デビュー作』が書けたと思っています」

 限界を超えたものだけに見えるというアキレウスの背中。それを捕らえた著者会心の一冊をぜひ手に取ってほしい。

プロフィール

長浦 京(ながうら きょう)

1967年埼玉県生まれ。法政大学経営学部卒業後、出版社勤務を経て、放送作家に。

その後、闘病生活を送り、退院後に初めて書き上げた『赤刃』で2011年に第6回小説現代長編新人賞、17年『リボルバー・リリー』で第19回大藪春彦賞、19年『マーダーズ』で第2回細谷正充賞を受賞。21年『アンダードッグス』で第164回直木賞候補、第74回日本推理作家協会賞候補となる。

単行本
アキレウスの背中
長浦京

定価:1,980円(税込)発売日:2022年02月10日

電子書籍
アキレウスの背中
長浦京

発売日:2022年02月10日

プレゼント
  • 『神域』真山仁・著 

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2022/10/5~2022/10/12
    賞品 『神域』真山仁・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る