260年の泰平の間に、積もり積もった借金はなんと25万両!
ひそかに「大名倒産」の準備を進める先代と、大ショックを受けながらも必死に「経営再建」を目指す若殿――
奇跡の大逆転は成るのか!?
2022年秋、この王道エンタメ時代小説の愉悦に浸って下さい。
著者のことば
たった百五十年前の物語である。
つまり読者の多くにとっては曽祖父母かそのまた父母が生まれ育った時代であろう。しかしそののちには、明治維新という大転換があり、急速な近代化に戦争や災害も重なって、のどかな武士の時代を遥か彼方に押しやってしまった。
文明は加速する。江戸時代の社会は二百年以上にわたってほとんど変化を見なかったのに、今や私たちの生活は数年前ですら隔世の感がある。いわんや江戸時代はいよいよ昔話とされて、すっかり類型化してしまった。
それでも私には、たった百五十年ばかりの間に人間までが変わったとは思えないのである。親子の絆、友情や恋愛、職場における真摯な努力。むろん、お金の苦労も。
少くとも、人間が功利的でなかった分だけ美しかったにちがいない曽祖父の時代を、私はこの「大名倒産」に書いた。
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