86歳を超えてなお旺盛な創作活動をつづける美術家の横尾忠則さん。昨年上梓した『原郷の森』(文藝春秋刊)は、横尾さん自身をイメージさせる主人公Yが、すでにこの世を去った人々と芸術や人生について語り合うという内容だ。
5月27日から、神戸市の横尾忠則現代美術館で開かれる展覧会は、小説『原郷の森』とモチーフの重なる横尾さんの作品を一堂に展示し、「ヨコオ・ワールド」を再現するものだ。
「1974年から最新作に至るまで、幅広い年代の作品を出品する予定です。目で見るイメージから新たな情報を得て、小説世界をより立体的に楽しんでいただけると思います」(学芸員の小野尚子さん)
小説には280名以上の人々が登場する。ピカソやキリコといった横尾さんが私淑する芸術家たち。黒澤明や東野芳明のような実際に交流のあった文化人たち。なかでもYを導く重要な存在が、三島由紀夫と宇宙霊人だ。1994年の《死の愛》には、すでにその両者が描かれている。
横尾さん自身が、今回の展覧会に寄せる意気込みをこう語る。
「『原郷の森』という本を書いた。それがまさか展覧会になるとは驚いた。
文章を絵で表現するというのは挿絵の行為だけれど、今回は違う。美術館全館を絵で埋めて、『原郷の森』を表現したいという。
『原郷の森』はフィクションとノンフィクションが合体した現実でありながら、異次元的物語です。ぜひ『原郷の森』を一読して、あるいは見終わった後で読んで下さってもいい。鑑賞者或いは読者は、文と絵がひとつになったこの世界から抜け出せるかな? 物語の肉体的体験をそのまま、あなたの人生体験にして下さい。このような読書体験と展覧会体験は、かつてない『体験』の世界へあなたを誘うことでしょう。作者の私もぜひ、美術館へ駆け込みます。そして文と絵のかつてない未知の世界を体験しましょう。」
展覧会は8月27日まで。10時ー18時開館(月曜休館。ただし7月17日(月・祝)は開館し、翌18日(火)休館。
横尾忠則現代美術館 078(855)5607(総合案内) https://ytmoca.jp/
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