マイナ保険証はウソばかり! 「DX推進」の下で進む、誤登録、情報流出、弱者切り捨ての真実に迫る
政府は“嘘!”をついている
マイナンバーカードへの不信感が、日増しに強まっています。トラブル続出のマイナンバーカードと、マイナ保険証に誘導するための、現行の健康保険証の廃止が、その大もとです。
まずは「政府の嘘!」の代表的なものを、いくつか列挙してみましょう。
■保険証を廃止しても問題はない
【嘘!】 医療現場、介護現場ともに、健康保険証の廃止で大混乱しています。「問題ない」と言っていた厚生労働省も、言を翻し「病院に行くなら、マイナ保険証だけでなく健康保険証も一緒に持っていけ」と言っています。
■カードを落としても大丈夫
【嘘!】 総務省は、「顔写真入りなので落としても他人が使うことができない」から大丈夫と言いますが、写真は貼り替えなどでごまかすことも可能です。また「大切な個人情報はICチップには入っていない」と言いますが、ICチップからマイナポータルにアクセスすれば、そこにある個人情報を根こそぎ見ることができます。
■顔認証があるので「なりすまし」はできない!
【嘘!】 別人の顔でも認証できてしまう「誰でも認証」のケースがすでにいくつも出てきています。トラブルが起きないように業者が顔認証のレベルを下げている可能性があり、クリニックによっては、「顔認証お断り」の貼り紙のあるところもあります。
■他人に個人情報を見られることはない
【嘘!】 すでに、企業や行政機から漏れた個人情報は2017年から2021年までで約3万5000人分にものぼります。マイナ保険証では、別人の情報を登録したものが約7300件と発表されるなど、情報ダダ漏れ状態です。また、暗証番号をしっかり管理していない人も多く、暗証番号を知られると、誰でも「なりすまし」て、すべての個人情報が見られてしまうのです。
■マイナ保険証でより良い医療が受けられる
【嘘!】 マイナ保険証の情報は、診療報酬(レセプト)情報や健康診断の情報なので、1~2ヶ月前の古い情報。医者が重要視するのは、リアルタイムのカルテの情報なのですが、これはまだ、マイナポータルには載っていません。薬などの情報も古く、リアルタイムに情報が把握できる「お薬手帳」のほうがはるかに有効です。
政府が、こうした多くの「嘘!」をつく背景には、さほど便利でもない、しかも「任意」であるはずのマイナンバーカードを、多くの国民に持たせたいという思惑があります。
■個人情報の「高速道路」で企業も儲けさせる
なぜそれほどまでして、政府はみんなにマイナンバーカードを持たせたいのでしょうか。
それは、このカードで個人情報を集め、個人だけでなく民間企業も利用できる個人情報の「高速道路」(DX)をつくりたいからです。
国民みんなをこの「高速道路」に誘導し、さまざまな手続きをカード1枚でできるようにするだけでなく、民間企業にもこの「高速道路」を利用させ、さまざまな商売で稼げるようにして、景気を浮揚したい。ダムの建設に代わる新しい公共投資が、マイナンバーカードによる、個人情報の「高速道路」づくりなのです。
ただ、この「高速道路」は現実を無視してつくられているので、いたるところが穴だらけです。それだけでなく、利用する便利さも感じられないので、このままでは尻すぼみになりかねません。
そこで政府が目をつけたのが、すべての人が便利に使っている健康保険証でした。マイナンバーカードがなくては健康保険証として使えない「マイナ保険証」を普及させるために、健康保険証そのものを廃止すれば、必然的にすべてのひとがマイナンバーカードを持たざるをえなくなると考えたのです。
つまり、トラブル続きの個人情報の「高速道路」にみんなを乗せるために、安全な一般道である「健康保険証」を、わざわざ法律で改正して廃止してしまったということです。
けれど、そのツケは大きく、政府の迷走は日を追うごとにひどくなっています。
暗証番号の管理が難しい人には、個人情報のセキュリティを無視した「暗証番号」のない「マイナ保険証」を発行すると言い出しました。さらに、「健康保険証」とどこがちがうのかわからない「資格確認書」も、新たに発行するといいます。
しかも、「マイナ保険証」はトラブルが多いので、病院へ行くなら「健康保険証」も一緒に持って行くように、と厚生労働大臣が呼びかけています。
極めつきは、2023年6月に政府のデジタル社会推進会議が、2026年中にセキュリティが強化された「新マイナンバーカード」を発行する、と公表したことです。では、今あるカードはどうなのか、最初からセキュリティを強化しておくべきではなかったかと問い詰めたくなります。
■このままでは、世界に誇る日本の医療制度が崩壊する!
こうした一連の動きは、ひと言で言えば「行き当たりばったり」。こんないい加減な政策でバカ騒ぎし、私たちの血税を使い、社会を混乱させることは、たぶん政府の当事者たちも予想しなかったのではないかと思います。
ただ、騒ぎが大きくなればなるほど、後には引けなくなる。法律まで改正して「健康保険証」の廃止をゴリ押ししてきた政府のメンツが丸潰れになるのを恐れ、ますます強硬な姿勢になっている気がします。
けれど、このまま進めば、国家的な損失があまりにも大きくなるのは目に見えています。
最も大きな損失は、日本が戦後60年かけて、どんなところに住んでいても、収入に差があっても、等しく平等に、安い料金で医療が受けられるようにと培ってきた健康保険制度が崩壊しかねないことです。
すでに「マイナ保険証」の導入で、健康保険制度を支えてきた医師たちが廃業を決めたケースも少なくありません。その中には、離島の過酷な診療所に飛び込んだ人気ドラマの主人公「Dr.コトー」先生のように、無医村を守るために常駐し続けてきたベテラン医師も多くいます。
さらには、現役の医師たちが、いま国を相手どって訴訟を起こしています。なぜなら、政府が進める方向が、現場の医師たちの志と大きく異なるからです。
医師だけではありません。高齢で、「マイナ保険証」をつくりに行けない人もいます。
最大2万円のポイントに釣られて「マイナ保険証」をつくった人の中には、5年後に自分で保険証を更新しないと無保険になることを知らない人も多くいます。病気をしない若い人たちは健康保険料の負担が大きいので、健康保険証がなくなれば、無保険のまま医療体制から脱落していく可能性があります。
本書は、いま混乱をまき散らしている「マイナンバーカード」の正体と、「マイナンバーカード」を普及させるための手段とされてしまった「マイナ保険証」について、その基本を知り、隠されている罠をひも解くことで、なぜ危険なのかということを皆さんにお知らせするために執筆しました。
本書が、政府の「健康保険証廃止」という暴挙を止めるための一助となることを、心から祈ります。
2023年7月24日
経済ジャーナリスト 荻原博子
<「政府は“嘘!”をついている」より>
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