- 2024.10.25
- 読書オンライン
平安神宮や神社仏閣だけではなく…「京都本大賞」受賞作家イチオシの「モダン歴史巡り」とは
天花寺さやか
天花寺さやか『京都・春日小路家の光る君』刊行記念エッセイ
出典 : #文春オンライン
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
人間とあやかしが共存する現代京都を舞台に、名家の次期当主をめぐる熾烈な「縁談バトル」が繰り広げられる――文春文庫の新刊『京都・春日小路家の光る君』は、2024年春注目の和風恋愛ファンタジーだ。
著者は、『京都府警あやかし課の事件簿』で第7回京都本大賞を受賞し、シリーズ累計26万部を突破した天花寺さやかさん。
刊行前から「大好物てんこ盛りの新シリーズ、わくわくどきどき楽しみで待ちきれません」「熾烈な縁談バトルなど、気になる内容と可愛らしいキャラで作品を読む楽しみが増してます」と、期待の声が上がっている。
本作の刊行を記念して、天花寺さんのエッセイを公開。京都をこれから観光する方におすすめしたい、「街中モダン歴史巡り」にぴったりな場所を紹介してもらった。中には、実際に小説の舞台に選んだスポットもあるらしい。
「光る君へ」のロケ地が身近な場所で、大歓喜
現在、NHKで大河ドラマ「光る君へ」が絶賛放送中であり、平安時代の京都が舞台とあって、私も毎週拝見しております。
中でも、京都で生まれ育った者のあるある話とでも申しましょうか、平安神宮がロケ地に使われたというお話は既に昨年のメディア記事等で伺っており、実際の放送で平安神宮にて撮影された場面が出てきますと、
「平安神宮や! あの俳優さんが立ったはる後ろのとこはきっと、今の平安神宮さんのあそこら辺や!」
と予想してワクワクし、満面の笑みで想像を膨らませております。
このように、大河ドラマのロケ地で使われる場所と申しますと、京都には平安神宮をはじめ歴史的な建造物等が沢山あり、時代が下がって明治・大正期を中心とした和洋折衷のものなら今も現役の施設として、一般人向けに広く活用されているものが多く残っております。
それらは特に、建物内へ気軽に入れる事が多いので、京都での歴史散策に非常におすすめです。いわゆる京都の「街中モダン歴史巡り」として、是非、足を運んで頂きたいなと思います。
観光中に通り過ぎているかも? 京都に溶け込む歴史的建築物
そんな「街中モダン歴史巡り」の代表的な例を挙げてみますと、私はまず、JR京都駅から徒歩20分のところに立つ、京都で最初の西洋建築と名高い「京都国立博物館の明治古都館(旧帝国京都博物館本館)・表門」を思い浮かべます。
その他にも、
・祇園の枝垂れ桜の名所・円山公園の敷地内に立つ、明治時代のたばこ王の別邸だった豪華絢爛な「長楽館」
・大正時代の竣工当時から今日まで有名なレストランで、スパニッシュ・バロックでエキゾチックな「東華菜館」と、アールデコ様式やパラボラ・アーチがはいからな「レストラン菊水」
・三条通りのシンボル的な煉瓦建築として2軒。明治時代に日本銀行京都支店としてイギリスのクイーン・アン様式で建てられた「京都文化博物館別館」と、そのすぐ近くに建つネオルネサンス様式の「中京郵便局」
これらなどはほんの一端。昭和3年(1928年)に毎日新聞社京都支局として建てられて、今はアートギャラリーやショップ、劇場として使われている「1928ビル」や、「京都市役所」や「京都府庁旧本館」、同志社大学今出川キャンパスの「クラーク記念館」をはじめとした各施設などなど……。
ほとんど全て、京都の有形文化財にして、京都の現役の施設です。各ガイドブックで特集が組まれる程、京都ではこのような歴史的建造物が溢れんばかりに存在し、博物館・喫茶店・公共施設等として今日この瞬間も利用され、町の人達から親しまれています。
新作には、大正14年に建てられた邸宅が登場
ガイドブックだけでなく小説でも舞台として書かれる事が多く、かくいう私の著作『京都・春日小路家の光る君』第一巻でも、大正14年(1925年)に建てられた老舗企業の社長の本宅で、現在は結婚式場等として活用されている「アカガネリゾート京都東山1925」を、華やかな縁談の舞台かつ京都の歴史をお伝えする舞台として選ばせて頂き、作品で書かせて頂きました。
他の著作『京都府警あやかし課の事件簿』シリーズでも、京都文化博物館別館をはじめ、様々な歴史的建造物を書かせて頂いております。
そんな歴史的建造物の活用方法について、一般的には上記で挙げたようなものが主流だと思いますが、実は京都では、それ以外の思わぬ活用で、登録有形文化財の建物を残しているケースがあるのです……!
どういうものかと申しますと、ずばり、「外食チェーン店」と「スーパーマーケット」。
京都では、大正時代に建てられた社屋や京都中央電話局上分局の庁舎だった建物が、それぞれ大手外食チェーン店「なか卯」や地元で親しまれているスーパーマーケット「フレスコ」として、地域の生活により密着した形で活用されています。
外食のお店とスーパーなので、もちろん、誰でも気軽に入れます。観光目的でなくても、ちょっとしたご飯やお買い物の時にでも、歴史的建造物へ行くという事になるのです。先に挙げた著作でも、主人公が上記のスーパーで買い物をする場面を書いております。
こういう街中の、それも当たり前のように生活に歴史的建造物が溶け込んでいるのも、京都ならではの面白さ。
京都を歩けば歴史に当たる。そんな言葉が流行ればいいなと、「光る君へ」を見ながら秘かに思う私なのでした。
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