〈韓国も日本も真実に基づかない運動に騙されてきた――韓国の歴史学者が実証研究で明らかにした「慰安婦問題」の真実〉から続く
「日本軍慰安婦問題」は、長年、日韓の間で大きな問題とされてきた。この問題をめぐって、しばしば激しい反日運動が起きたことも記憶に新しい。しかし、韓国の歴史学者、知識人の間で、植民地時代の朝鮮について、実証的な研究を行い、それまでの反日的な歴史観は間違いだったことを論証する人々が現れた。
それが一冊にまとまったのが李栄薫編『反日種族主義』である。そのメンバーの一人である著者の朱益鍾氏は、反日運動の核のひとつであった慰安婦問題を取り上げ、膨大な資料に基づき、「慰安婦問題」の事実を明らかにした。その最終結論ともいえる『反日種族主義「慰安婦問題」最終結論』(文藝春秋)より、プロローグを一部抜粋して紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く)
辻褄の合わない慰安婦証言
挺対協が関わる慰安婦証言集の中から、「慰安婦」キム・ウィギョンの証言をかいつまんでみてみよう。
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一九一八年、京城(編集部注:現・ソウル)の太平(テビョン)通りで生まれたが、家は貧しかった ……二〇歳になった一九三八年の春だったか秋だったか、二人の日本の軍人が、私が一人でいる家に来た。彼らは「軍人たちの所に行こう」と噓をつき、汽車の駅に私を連れていった。
そして馬を載せる貨車に八人の女性と一緒に乗せられた。京城の女性、全羅道の女性、慶尚道の女性など、みな捕らえられて来たのだった。……
突然汽車が止まったと思ったら、一群の日本軍が汽車に押しかけてきて、無理やり貨車の戸を開けた。汽車には全部で三〇人余りの女性たちが乗っていたが、日本軍は私たちをみな野原に引きずり出し輪姦した。女性たちが死に物狂いで反抗すると、日本軍は刀で威嚇し銃床でなぐり始めた。私はなぐられ、身体中傷だらけになり血まみれになった。幾人かの女性は逃げようとしたが、むやみやたらに銃で撃たれ弾に当たって死んだ。……
汽車は南京の、とある河の北側に到着した。私たちは馬小屋で過ごしたが、数日間は食べるものもなく飢えるしかなかった。私たちは昼は日本軍の服を洗い、夜は日本軍に蹂躙された。この部隊はときには数百人にもなった。……
南京に一年ほどいたが、その後、車に乗せられて部隊について回り、宣昌(二年)や長沙(四年)に移った。……日本の軍人たちがお金をくれたが、日本が負けるとそれには何の価値もなくなった。(韓国挺身隊研究所 2003年)
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私には理解しがたい証言である。日本の軍人が白昼に京城のある民家に押し入り「軍人たちの所に行こう」と言って女性を引っ張っていった、そうやって引っ張っていった女性たちを汽車に乗せ、遠く中国にまで連れていった、そして、どこかで汽車が止まると、別の日本軍が束になって押しかけてきて女性たちを強姦し、逃げる女性たちは銃で撃ち殺したというのである。女性たちが逃げたとしても、軍人だったらたやすく捕まえられたはずで、せっかく遠くまで連れてきた女性たちを、そんなに簡単に銃で撃ち殺したりするだろうか。そもそも、苦労して女性たちを引率してきた側の軍人たちは、押しかけてきた側の軍人たちが彼女たちを銃で撃ち殺したりしても、指をくわえて見ていたのだろうか。年老いた元慰安婦が辻褄の合わない話をするというのは、ありがちなことではあるが、この証言を採録した者が何の事実確認作業もしなかったというのは、私にはまるで理解できない。
理解しかねるのは、有名な慰安婦運動家の李容洙の証言も同じである。一九九三年に刊行された初の慰安婦証言集で李容洙は、友人の母親から、友人と一緒に良い所に仕事に行くよう提案され、こっそり家出したと証言している。日本人の男から赤いワンピースと革靴を貰い、とても嬉しくて彼についていったという話だった。李容洙は一九九二年八月一五日に放送されたKBSテレビの「生放送 女性、私は女子挺身隊」という番組でも「私はそのとき一六歳で、貧しくてボロしか着られず、ろくに物も食べられずにいたのだけれど、誰だったか赤いワンピース一着と革靴一足を持ってきてくれました。それを渡されながら行こうと言われ、それを貰って、そのときは何も知らずに、いいよと言ってついてゆきました」と証言していた。
ところが後日、李容洙は、日本の軍人や官憲に強制的に連れてゆかれたと証言を変えた。特に二〇〇七年二月一六日の米国議会の聴聞会では、「軍人と女の子が入ってきて肩をこう摑み、片手で口を塞ぎ、背中に何かを突きつけながらそのまま連れてゆきました、夜に」と証言した。米国議会の聴聞会という重要な席でようやく、それまで口にできなかった真実を述べたのか、それとも、あまりにも重要な場だったので意図的に噓をついたのか。このことについて慰安婦運動家たちは、何の言及もしようとしない。
透き通った目で資料を読む
慰安婦がいかなる存在だったのか知っていた同時代の人たちは、慰安婦を日本による植民地支配の被害者とはみなさなかった。韓日請求権交渉においても、慰安婦は韓国側の被害事例として提起されなかった。日本軍慰安婦が存在していたときから四〇年余りが経ち、その記憶を持つ人たちがいなくなると、新たな慰安婦の物語が作られ始めた。
道ばたで、村の井戸ばたで、あるいは我が家で日本の軍人や官憲に捕まえられた朝鮮人少女が、 日本による侵略戦争の戦場に引っ張ってゆかれ慰安婦にさせられた。朝鮮人少女は日本軍の性の慰み者として酷使されたばかりでなく、日本の軍人に虐待され暴行された。そしてついには日本の敗戦時、その少女らはふるさとに帰れず虐殺された。運よく生きて帰ってきた少女らは、後日おばあさんになってようやく慰安婦の実態を告発し、日本を糾弾した。
この慰安婦の物語は、強制動員された徴用工の物語とともに韓国人に強烈な反日感情、反日主義を呼び起こした。自分の姉妹が、娘が日本軍に連れてゆかれて性の慰め者になったとしたら、どうして怒らずにいられるだろうか。この物語を作り出し慰安婦運動を主導した挺対協、正義連は、ついに政府の対日外交まで牛耳るに至った。その結果、二〇一〇年代末の慰安婦運動と徴用 工運動は韓日関係を破綻状態に追い詰めた。
歴史の真実を明らかにしようとする幾人かの勇気ある歴史家たちが、慰安婦の真実を語り始めた。そしてまた、慰安婦運動家たちの間の内輪揉めによりその黒い内幕も一部露わになった。ついに真実の時間が訪れた。慰安婦関連資料はその間、とてつもない量にまで蓄積された。反日の色眼鏡をはずし、透き通った目でこれらの資料を読みさえすれば、日本軍慰安婦制がどのようなものであったのか、きちんと把握できる。さあ、一緒に日本軍慰安婦制の内幕を探る旅に出よう。
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