- 2024.06.28
- 読書オンライン
街中に公衆電話があった時代、ノベルティとして人気があった!? みうらじゅんが3枚集めた「馬の交尾テレカ」
みうら じゅん
『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』より #2
〈買った本人のみうらじゅんも置き場に困っている、タマタマがとんでもなくデカいタヌキの置物〉から続く
ご時世的には「不適切」だけど思わず笑ってしまうエッチ系コレクションや、若い頃お世話になった写真集やビデオなど、生前整理の際に一般的には真っ先に捨てられてしまいそうなモノたちを、還暦を過ぎた今も「僕は捨てないもんね!」と持ち続けているみうらじゅんさん。そんなみうらさんが、自身の「いやら収集品」から厳選した100点について書いた『通常は死ぬ前に処分したいと思うであろう100のモノ』(文藝春秋)より一部抜粋して紹介します(全3回の2回目/最初から読む)
◆ ◆ ◆
“チャカチャンリン……”
お囃子が流れ、年寄りの落語家が高座に登場。
どうも、相も変わらず昔話で。若い皆さんはご存じないと思いますがな、かつては公衆電話というものが街中にいっぱいおましてね。公衆便所とは違いまっせ。通話のできる機械ですわ。受話器というものを外しましてね、上の細長い穴に十円玉を投入しますねんわ。それから先方のね、電話番号を回します。近いとこならええけれど遠距離ともなりますとね、十円玉がバンバン落ちますんやわ。通話が途中で切れますから、そこはどっさりと十円玉を手に電話ボックスに駆け込んだものでございます。
電話ボックス? これも分かりませんよね。要するに個室ですな。初期型は立って電話を掛けてる人の顔だけがガラス窓から見えていて、しゃがむと見えなくなるもんでした。それをいいことに電話ボックスの中で小便や、果ては大便までする輩やからが登場しましてな。だからボックスは全面ガラスになったんですわ。その頃になるとプッシュ式の百円玉が使える機種に変わりましたな。最終的にはテレホンカード(通称・テレカ)というやつが登場しました。500円、1000円分のテレカはね、当時遠キョリ恋愛の救いの神やったんですよ、ホンマでっせ。出始めは簡素なデザインのカードでしたけどね、それが普及していくとアイドル写真入りのテレカやとか様々なデザインのものが出回りました。
そこで今回紹介するこのテレカ、よく見てくださいよ。馬の交尾三連発! 似てるけどちょっと違いまっしゃろ。
「ねぇ、電話掛けたいんだけど、テレカ持ってない?」
「あぁ、持ってるよ」
「サンキュー……何? このテレカ!?」
これ、今ならセクハラってことになっちゃうんですかね? 電話代、おごったのにね。ま、それを笑って済ませる大らかな時代のお話ですわ。お後がよろしいようで。
“チャカチャンリン……”
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