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「それなら女性はみんな子供が作りたくて仕方がなくなるはずだけど…」恋愛抜きの結婚をした能町みね子が考える、人が「子供を欲しがる」理由

「それなら女性はみんな子供が作りたくて仕方がなくなるはずだけど…」恋愛抜きの結婚をした能町みね子が考える、人が「子供を欲しがる」理由

岡村 靖幸

『幸福への道』 #2

出典 : #文春オンライン
ジャンル : #ノンフィクション

「最初から結婚目当てで近づいた」が…スキンシップは皆無、ハグは「気持ち悪い(笑)」能町みね子が語る、ゲイの夫との“恋愛抜きの結婚生活”〉から続く

 エッセイストの能町みね子さんは、ライターのサムソン高橋さんと恋愛の絡まない「(仮)」の結婚をして、その生活を元にした自伝的小説『結婚の奴』を上梓した。

 ここでは『久保みねヒャダこじらせナイト』などを通じて、能町さんと昔からの知り合いであるという岡村靖幸さんの『幸福への道』から二人の対談の一部を抜粋して紹介。岡村さんが「結婚(仮)」に至った能町さんの恋愛観や「子を持つ」という選択肢について考えていることなどを訊いた。(全4回の2回目/続きを読む

能町みね子さんと岡村靖幸さん ©文藝春秋

◆◆◆

恋愛はめんどくさい

岡村 つまり、仕事のパフォーマンスを上げたいという気持ちもあったから、結婚しようと思った。

能町 完全にそうです。精神的に安定したいというのが大きかった。あと、今後恋愛があるかも? と思うのがイヤになったということも大きくて。

岡村 能町さんの過去のインタビューを読むと、恋愛に関して、「アタックされるけどうまくいかない」とよくおっしゃっている。

能町 今回、結婚の経緯を本(『結婚の奴』)に書いたとき、その辺を突き詰めて考えたんですけど、そもそも私は、人をそんなに好きになったことがないんですよ。恋愛という意味で。みんながよく言うような、「いつも一緒にいたい」とか「夢中になる」とか「誰かに取られたくない」とか、そういった強い気持ちを持ったことがあんまりなくて。それがずっとモヤモヤしていたというか。

岡村 能町さんの幼少の頃のエピソードを読むと、子供の頃からそうだったと書いてましたね。好きとか愛してるとかがメインのJ-POPがピンとこなかったと。

能町 それはそうですね。

岡村 生来そういう感じということですか? それとも、たまたま、夢中になれる人と出会えていないということですか?

能町 40年ずっとこうだと、もうないんじゃないかと。それはやっぱり生来だと考えるべきだなと。仮にあるとしても、それを待つのにも疲れちゃった。だったらもう、結婚の形態を先取りしたほうが気持ち的にラクだなと。それをね、「間違ってる」と言われることがたまにあるんですよ。飲みの場とかで、「それは本当に好きな人と出会ってないだけだ」って(笑)。そういうのを力説されると、ホント腹立ってくるんですよ。

岡村 ははははは。

能町 ないものはないんだよ! って(笑)。そういうのもイヤになっちゃって。それよりも、誰かと暮らしたほうが精神的にラクだなって思ったんですよ。

岡村 実際、快適なんですもんね。

能町 快適です。とにかく、恋愛というものに向いてないから、恋愛を踏んで結婚へ至るのは無理。好かれたら好かれたで面倒くさいし、好かれたからという理由だけで結婚しても私が不満を抱えるばっかりになる。お互いに合理的な意味でのパートナーのほうがいいなって。だから、こういう結婚のあり方は、精神的にもラクになるので、みんなに勧めたいとは思うんです。もちろん、結婚したいのになかなかできない岡村さんにもいいんじゃないかなあと。

岡村 どうかしら(笑)。

「なんでみんな子供が欲しいのかな」

能町 岡村さんは、友達と同居の経験は?

岡村 ないです。でも、『テラスハウス』みたいなのはやってみてもいいですけどね。

©文藝春秋

能町 え? 岡村さんが『テラスハウス』の住人になるなら、めちゃくちゃ観ますけど(笑)。

岡村 以前、20代30代のキャリア女性たちと話したことがあって。結婚の話題になったときに、「子供は産みたくない」と彼女たちは言ったんです。妊娠・出産となると体が大変だし、その後仕事に復帰するのが大変になるから、子供を持つなら、代理母出産がいい、それが難しいならアンジェリーナ・ジョリーみたいに養子がほしいと。僕はちょっと驚いたんです。能町さんは共鳴できます?

能町 あー。まあでも、ちょっとわかるかなあ。なんでみんな子供が欲しいのかなというのは最近よく考えるんです。最近はいろんな結婚のカタチがあるじゃないですか。私は男から女になったので妊娠はできないですが、女から男になって、女の人と結婚して、友達の精子で妊娠して、子供を迎えた夫婦が知り合いにいるんです。でも、そんなのはっきり言って無茶苦茶めんどくさいなと私は思ってて。養子を迎えるとなっても、資格が大変じゃないですか。

岡村 大変です、日本では。

能町 そういうのを見ると、そこまでして子供っている? っていう気になるんですよ。別に否定するわけではなく、それを突き詰めていくと、よくわからなくなってきて。家を継ぐためというのも、いまの時代はあんまりないし。

©文藝春秋

「自分の子供がほしい」に至る理由

岡村 自分の子供がほしいというのは、ロジックじゃないんだと思うんですよ、男も女も。本能としてあるものじゃないですかね?

能町 そうはいっても、人間だから理性がある。なのに「作らなきゃ」に至る理由はなんだろうと。

岡村 遺伝子情報の第1番目に書いてある最重要項目だからじゃないですかね? 

能町 種の保存?

岡村 種の保存は遺伝子情報の最重要ワードですよ、人間もアリもキリギリスも、どんな生き物も。

能町 とすれば、弱くない? って思いません? 結果、保存しない人も結構いるし、そのキャリア女性たちも自分の子じゃなく養子でいいと思ってしまう。それが最重要ワードなら、女性はみんな子供が作りたくて仕方がなくなるはずだけど、そうはならないし、少子化になってる。子供を産むという欲望は、人間の理性ぐらいで抑えられるんだと。それも不思議で。

岡村 確かに。文明が進めば進むほど少子化も進んでいく。

能町 そう考えていくと、「子供がいたら面白いから」とか「生活が変わるから」とか、言ってみれば親のエゴなんですけど、「だから産む」んじゃないかなと思うんですよ。種の保存というよりも。

岡村 それは言いかえれば、子供以外に面白いことがあれば産まなくなるということですよね。働くことや、自分で何かをクリエイトすること、子育て以外の面白いことがあればあるほど、少子化へ向かっていくのだと。

能町 その面もあると思います。

モラトリアムからの脱出のための子育て?

岡村 社会政策で少子化を防いでいる国もありますよね。例えばフランスとか。

能町 確かにフランスは増えてはいますが、そこまで劇的には、っていう感じじゃないですか。やっぱり、子供がいると人生に起伏ができて面白くなるから「欲しい」と思うんじゃないかなって。人って、小学校中学校高校と、ふしぶしでの記憶ってわりとあるけど、学生生活が終わってしまうと、区切りがなくなるからダラダラしてしまうじゃないですか。10年20年単位でだらっとしてしまうし、時の流れもどんどん早く感じてしまう。でもそこに子供という要素が入り込むと、強制的に子供の文化が入ってくる。そういった区切りがほしいから、子供がいたほうが面白いのかなと。

岡村 延々と続くモラトリアムからの脱出のために子供を育てる。

能町 そう。人生に波風を立てるために子供を作るのかなって。だから、これから先、ダラダラと続く人生に、どう区切りをつけるかというのは、考えてしまいますね。相当規模は小さくなりますけど、動物飼おうかなって(笑)。

岡村 僕も考えるときがあります。

能町 仕事場の1階に野良猫が住み着いていて、手なずけたから連れて帰りたいんですけど、3階に住んでるおばあちゃんがご飯をあげてるから、勝手に自分ちの猫にするわけにもいかないんですよ。

岡村 いいですよねえ。猫はいい。癒される。最近、猫動画ばっかり観てるから、おすすめでいっつも出てくるんですよ。あなたはどうせ猫でしょって(笑)。

◆◆◆

 この続きは岡村靖幸さんの『幸福への道』でお楽しみください。

「それまでアイドルがやらなかったことを積極的にやらせた」放送作家の鈴木おさむが語る『スマスマ』が“バケモノ番組”になったワケ〉へ続く

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