──本書でもいくつかの蔵が紹介されていますが。
勝谷 蔵元や杜氏(とうじ)の方々にはお世話になりました。
例えば、鳥取の諏訪酒造さんは、僕がフリーになったその年に取材をさせていただいた古い付き合いです。当時はまだ名前も知られておらず全くの無名のライターだった僕に対して、とても親切にしてくれました。そんなご縁もあって、本書でも取材に伺っているわけです。人間関係はなによりの宝ですね。僕は、酒や食い物の取材をしていて、悪い人に会ったことがない。
──そんな勝谷さんに是非教わりたいのが、良い店の見分け方なのですが……。
勝谷 店の主人本人が「こだわっている」などと言っているうちはまだまだ二流です。本物は、「こだわっている」なんて言わない。言わなくても、滲み出てくるものです。
──店構えなどでは判断できないのでしょうか?
勝谷 ありますよ。けれどこれは伝えるのは難しい。なんというのか、曰(いわ)く言い難いオーラが出ています。
──旅先など、知らない土地では?
勝谷 ホテルのフロントやタクシーの運転手にも話を聞きます。でも、これは五分五分です。ところが一〇〇%信用できるのが地元の蔵元の話。蔵元がここぞという店は、その酒に一番合った旨い料理を出す。いわば、店と蔵元が相思相愛の状態なのです。
──なるほど。勝谷さんならではの情報網ですね。
勝谷 それから、店選びで大事なのは、「ハズレだな」と思ったら一杯だけ飲んでさっさと帰ること。「どうせ入ったんだからここで呑んでいこう」などと思わないことです。
人生なんでもそうで、「どうせ始めたんだから」「どうせここまで来たんだから」と、どうせで行くことが多いでしょ。でもこれが駄目なんです。「麺通団」団長の田尾和俊さんがいつも「名誉ある撤退」と言っていますが、それが必要なんですよ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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