週刊文春にきて間もない頃、ベテラン記者がスクープネタを次々と繰り出すのを見て、正直体が震えた。いったいどこで仕入れてきた情報なのか。すべてが聞いたこともないような驚愕の情報だ(序章)――芸能人の薬物使用、テレビ局プロデューサー横領事件などを報じたエース記者が、取材現場の実像を明かす。
――本書は20年間にわたって週刊文春の記者として最前線で活躍した中村さんが、様々なスクープの舞台裏を明かしたものです。第1章は、「『シャブ&飛鳥』スクープの舞台裏」。CHAGE and ASKAの飛鳥涼が逮捕されたのは、この衝撃的なスクープから9カ月半も後のことでした。
「ある知人から『どうも飛鳥がクスリをやっているらしい』と聞いて、取材を始めましたが、こういう情報はガセネタ(嘘)も多いんです。編集部のデスクも関心を持ってくれましたけど、当局が動いているわけでもないし、確証を掴まなければとても書くことは出来ない話です。それで、とりあえずは毎週担当になる様々な記事を取材しながら、並行してひとりで取材を進めていたわけです」
――いきなり大人数をかけて一気に取材するわけではないんですね。
「核となる証言なり証拠なりを掴むまでは、単独で進めることも多いですね。あまり騒いで先方に『文春が動いている』などと知られてはいけませんし。飛鳥の取材ではかなり苦労しましたが、20年間培ってきた人脈をフルに活用して、ようやく決定的な証拠を得ることができた。それが、彼が薬物を吸引しているとみられるビデオでした」
――飛鳥に直撃取材をした同僚記者の報告を聞く場面や、編集長がタイトルを「シャブ&飛鳥」にしたと告げる瞬間など、実にリアルですね。
「ニュースソースの関係ではっきりとは書けないところもありましたが、出来るだけ事実に即して書いています。『シャブ&飛鳥』と聞いたときなんて、さすが実にエグいタイトルをつけるなあ……と(笑)」