2019年3月8日、『「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語』が文春文庫から発売されました。いまいちど、東日本大震災、そしてその後各地で起きた震災を振り返る機会になればと思い、3年前にまとめた記事ですが、再公開します。
被災した人々の暮らし、原発、食の安全、エネルギー問題など、東日本大震災後は日本全体でさまざまな問題に直面しています。余震が続く状況下でも自らの役割を全うした人々の記録、被災地の子どもや遺族の作文・手記、原発をはじめとした社会問題に迫る論説――これら諸問題へ、それぞれの立場から向き合ったノンフィクション書籍、および関連記事をまとめました。
『「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語』
常井健一『小泉純一郎独白』
「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」
遠藤美恵子『虹の向こうの未希へ』
青沼陽一郎『フクシマ カタストロフ 原発汚染と除染の真実』
佐々木敦『シチュエーションズ 「以後」をめぐって』
小熊英二『原発を止める人々 3・11から官邸前まで』
森健『つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版』
森絵都『おいで、一緒に行こう』
河北新報社『河北新報のいちばん長い日』
柳田邦男『「想定外」の罠――大震災と原発』
志村嘉一郎『東電帝国 その失敗の本質』
※掲載は単行本の発売日が新しい順です。
>>>小説編はこちら
『「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語』
2011年3月11日の東日本大震災を生き延びた子どもたちに、避難所で作文や絵を書いてもらった作文集『つなみ』は20万部のベストセラーになりました。企画取材した森健さんは、その後もずっと子どもたちと家族を取材。7つの家族の喪失と再生を綴ります。
子どもたちは「書くこと」で悲しみをどう乗り越えたのか? 8年の時を経て、すでに結婚して子どもがいる人もいます。「つなみの子」の子どもたちの世代が誕生している――その強さに目を開かされます。
『小泉純一郎独白』 (常井健一 著)
政界引退後もなお、その記憶が語り継がれ、人気の衰えも知らぬ元総理・小泉純一郎。総理官邸を後にして10年、初めてロングインタビューに応じた記録が本書です。
安倍政権、野党再編、原発ゼロ、闘争の作法、盟友との決別、息子・孝太郎と進次郎、我が「余生」……月刊誌「文藝春秋」2016年新年特別号に28ページにわたって掲載された常井氏による「小泉純一郎独白録」に、未公開部分を含めて完全掲載。
■インタビュー・対談(本の話WEB 2016.02.19)
安倍政権、進次郎、原発……小泉純一郎がすべてに答えたインタビュー決定版!
「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」
東日本大震災から5年――次々と移り変わる環境の中、「つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版」に作文を寄せてくれた子どもたちはどのように暮らしてきたのか?
再び声を掛け、岩手、宮城、福島の57人に、5年間の日々を率直に綴ってもらいました。
■自著を語る(本の話WEB 2016.03.10)
あの日から五年
『虹の向こうの未希へ』 (遠藤美恵子 著)
「急いで高台へ避難してください」東日本大震災のとき、最後まで放送で呼びかけ続け、津波にのまれてしまった遠藤未希さん(南三陸町職員)。本書は、彼女の母・美恵子さんの手記です。
「命の呼びかけ」と称賛される一方で、喪失感に苛まれ続ける日々――最愛の娘を失った絶望感にたびたび襲われながらも、母親として魂を再生させていく物語です。
■書評(本の話WEB 2014.08.22)
防災無線で津波避難を呼びかけ続けた故・遠藤未希さんの母が綴った3冊の日記(文:後藤岳彦|NHK記者)
『フクシマ カタストロフ 原発汚染と除染の真実』 (青沼陽一郎 著)
フクシマはチェルノブイリが犯した初期対応の過ちを繰り返してしまった――福島第一原発事故から3年かけて、2つの事故現場を徹底取材した著者の結論です。
本書のテーマは、低線量被曝による健康被害、福島の子どもたちの甲状腺がん、農産物の汚染、無意味を承知で行なっている除染、汚染水漏れによる海洋汚染など。除染すれば家に帰れると喧伝した政府の欺瞞を暴く波紋必至の1冊、900日超の取材による決定版です。
■自著を語る(本の話WEB 2014.02.19)
フクシマの未来の子どもたちへ
『シチュエーションズ 「以後」をめぐって』 (佐々木敦 著)
大震災を、映画監督、写真家、演劇人、小説家はどう受け止めたか、未曾有の惨事に芸術は有効か?
小説だけではなく現代詩、演劇、映像、音楽など多岐に渡る分野での批評活動を行う著者が、東日本大震災後の表現者達を取り上げた批評集。第一線の表現者たちの血飛沫が飛んでくるような1冊です。
■今週の必読(週刊文春WEB 2014.02.03)
ジャンルを越境し、3・11を越境する批評集(文:青山真治│映画監督・小説家)
■書評(本の話WEB 2013.12.17)
私はいま、なにをしないではいられないか(文:山田亮太|詩人)
『原発を止める人々 3・11から官邸前まで』 (小熊英二 編著)
官邸前デモに集まる「普通の人」とは誰なのか? 3・11後、全国で起こった反原発運動は、「普通の人」が初めて参加したと言われました。
様々な人物の証言を踏まえ、編著者の小熊英二さんがこの現象をどうとらえたか、衆参の選挙分析も含め、100枚の論考で示します。
■インタビュー・対談(本の話WEB 2013.10.23)
新しい社会の機運を感じた
「つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版」 (森健 編)
第43回大宅壮一ノンフィクション賞を編者の森健さんとともに受賞したのが、「つなみ 被災地のこども80人の作文集」(文藝春秋臨時増刊号)に登場する子どもたちです。宮城、岩手の子どもたちの作文集に、福島の子どもたち30人の作文を新たに加えたのが本書。原発事故と放射能問題によって故郷からいまも離された福島の子どもたちの1年後の心境を綴った作文は、地震の影響の大きさと、一方で子どもたちの心の強さを感じさせてくれます。
■特設サイト(本の話WEB)
森 健『つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版』 宮城・岩手・福島115人が刻みつけた3・11の記憶
※関連ムック
「つなみ 5年後の子どもたちの作文集」
『おいで、一緒に行こう』(森絵都 著)
福島原発の事故により、無人地帯となった原発20キロ圏内には、飼い主を失ったたくさんのペットたちが取り残されました。かねてより、動物保護活動の取材を続けてきた著者は、ある女性ボランティアの存在を知り、同行を申し出ます。
現地の様子を知りたい一心で駆けつけたフクシマで見たものは――“生命”と“絆”の意味を問う、渾身のノンフィクションです。
■特設サイト(本の話WEB)
東北大震災、福島原発20キロ圏内のペットレスキュー 森 絵都『おいで、一緒に行こう』
■自著を語る(本の話WEB 2012.05.08)
福島原発二十キロ圏内のペットたち
『河北新報のいちばん長い日』 (河北新報社 著)
2011年3月11日、壊滅的な被害を受け休刊の危機に瀕しながらも新聞を作り続けた河北新報。自らも被災しながら取材を続けた記者たち、倒壊した組版システム、被災者から浴びた罵声……彼らは何を思って新聞を出し続けたのか?
〈新聞人〉たちの凄絶な闘いの記録です。
■解説(本の話WEB 2014.04.03)
『河北新報のいちばん長い日』解説(文:後藤正治|ノンフィクション作家)
『「想定外」の罠――大震災と原発』 (柳田邦男 著)
政府や東電が繰り返した「想定外」。しかし、それが思考停止の言い訳にすぎないことを、著者は事故・災害ジャーナリストの第一人者として明晰に看破します。さらにはスリーマイル島、チェルノブイリ、東海村臨界事故、阪神・淡路大震災など40年分の事故論を収録。すでに警鐘が鳴り響いていたことに驚かされます。
福島第一原発の事故調査・検証委員会のメンバーとなった筆者による、「事故論のバイブル」というべき1冊です。
■自著を語る(本の話WEB 2011.09.20)
災害からじっと見つめられて
『東電帝国 その失敗の本質』 (志村嘉一郎 著)
地域独占企業として成長し、政治献金と天下りポストの提供などで、政官産の複合体をいち早く作り上げた東京電力。原子力発電の開発が主力となるや学界とマスコミをも巻き込み、「原発安全神話」を作り上げていきました。福島原発の事故により明るみに出た東電の「驕り」。歴代経営者の「失敗の本質」は奈辺にあったのか――。
長く朝日新聞で担当記者を務め、電力中央研究所顧問に転じた著者だからこそ書ける内幕です。
■自著を語る(本の話WEB 2011.06.20)
「原発安全神話」は、いかに崩壊したか